
2020.03.06溶接topics
鉄の接合などに用いられる溶接ですが、いくつか種類があります。それぞれの特徴を知らなければ、作業効率を上げるのは難しいです。
本記事では、溶接の概要や種類を詳しく紹介します。また、それぞれの溶接の種類のメリット・デメリットも解説するので、ぜひ参考にしてください。
溶接とは、溶接材を添加し、熱や圧力をかけることで、母材同士をつなげることです。鉄骨建築・船舶・鉄道・建築機械・発電プラント・化学プラント・橋・自動車などの構造物に多く用いられています。
溶接材は、材料同士を接合する要となる金属です。材料がいくら頑丈でも、溶接材が貧弱だと、その構造物全体の耐久性は低くなります。溶接材は、さまざまなものが販売されており、以下のような目的で添加されます。
溶接材は、母材の種類によりますが、Si(ケイ素)・Mn(マンガン)・Mo(モリブデン)・Cr(クロム)・N(ニッケル)などを使うのが一般的です。
母材の種類・溶接手段・溶接する環境・完成品のスペック・作業コストなどを考慮して適切なものを選びましょう。
溶接には、以下のような種類があります。
それぞれ特徴があるため、次項から詳しく解説します。
母材と溶接材のどちらか一方に熱を加えて接合する方法です。物理的な圧力はかけません。ガス溶接・アーク溶接・非消耗電極式 ・消耗電極式・エレクトロスラグ溶接・電子ビーム溶接・レーザービーム溶接などが該当します。
母材と溶接材を、物理的な圧力によって接合する方法で、熱は発生させません。抵抗溶接・重ね抵抗溶接 ・突合せ抵抗溶接 ・鍛接・摩擦圧接・爆発圧接などが該当します。
母材より融点の低い溶接剤を使って接合する方法です。母材には一切の熱を加えません。溶かした溶接材は、接合面の微細な隙間に入り込み、母材同士をくっつけます。
硬いろうを使う「ろう付け」と柔らかい鉛とスズを用いる「はんだ付け」などが一般的です。
電極を離す際に発生する放電現象を利用して母材を接合します。放電現象を自発的に発生させる「溶極式」と、他の母材で発生した放電現象を活用する「非溶極式」とに分かれています。
アーク溶接で準備するものは、以下の通りです。
アーク溶接の前に、作業場の換気・溶接機器の動作点検・母材の清掃・電流調整などの事前準備をしましょう。溶接機器の動作点検は、電源・ケーブル・ワイヤー・送給装置・溶接トーチなどを中心に行います。
電極を離す際に発生する放電現象を利用して、材料と溶接材とを溶かし母材を接合します。放電の際に発生する温度は、5,000℃~20,000℃ほどです。母材には、電気を通しやすい物質を利用します。
具体的な手順は、以下の通りです。
アーク溶接は、ピンポイントで熱を加えるため、小さな材料の接合にも使えます。使用機器も安価なものが多いため、複数台を同時稼働させることも可能です。有毒なガスを発生させない手法もあり、人体への悪影響も抑えられます。
ただし、フラックスを塗布した電極を用いる場合は、電極の交換やスラグ除去などのコストが発生します。また、炭酸ガスを、母材から酸素を除去するシールド材として用いる場合も、厚板の溶接に不向きです。
アーク溶接も種類によって、メリット・デメリットあるので、自分にあった方法を選びましょう。
アーク溶接では、電極棒と母材・溶接材との距離感をうまくつかむことが大切です。遠すぎると電極に流す電流が小さくなり、溶接材がうまく溶けません。近すぎると電流が大きくなり母材や溶接材に穴を空けてしまいます。
まずは、ちょうどよい距離感を覚え、経験を重ねながら接合面を整えるのがポイントです。溶接がうまくいったかは、溶接痕を確認しましょう。溶接部に貝がらのような痕が残っていれば成功です。
アーク溶接は、強い熱と光が絶えず発生するため、目や顔面を防護する必要があります。これがないと数千℃の火花が目や肌に直接触れるので注意しましょう。アーク溶接において、遮光マスクは必須アイテムです。
溶接時に添加する溶接材は、接合を続けるうちにいずれなくなります。補充もしにくいため、準備の段階で十分な量をストックしておきましょう。溶接中に持ち場を離れるのは、事故の危険があるためおすすめしません。
溶極式のアーク溶接で、半自動溶接機を使用して材料を接合します。普通のアーク溶接とは異なり、溶接材とガスが自動供給されるのが特徴です。
アルゴンや二酸化炭素などのガスを供給しながら、溶接材を溶かし母材同士を接合します。
「CO2溶接」「MAG溶接」「MIG溶接」という、3種類の方法が一般的です。
一般的なアーク溶接では、片方の手に電極を、もう片方の手に溶接棒を持つ必要があり、習得にはある程度の知識と経験が必要でした。しかし、半自動溶接は溶接材が自動供給されるため、片方の手で作業を行えます。
母材と溶接材の種類が合えば、通常の方法より早く溶接できるため、作業効率も向上するでしょう。大量の溶接に向いており、基本をしっかり押さえれば初心者でも習得できます。ガスを使わない方法もあるため、屋外で作業も可能です。
ただし、半自動と言っても、溶接作業自体は手作業で行わなければなりません。溶接材の供給が自動で行われるだけであって、作業者のスキルは依然として重要だからです。
スキルがなければ、大量溶接できるというメリットもなくなります。スキルの向上を意識し、習熟度を高めながら、作業効率を向上させましょう。
非溶極式のアーク溶接で、ティグ溶接とも呼ばれています。タングステン・イナート・ガス溶接の略です。
電極に消耗しないタングステン、シールド材にアルゴンガスを用いて母材同士を接合します。電極がタングステンに代わるだけで、具体的なやり方はアーク溶接と変わりません。
溶接時に火花が発生せず、ほとんどの母材に使用できます。仕上がりが美しく、アーク溶接や半自動溶接より細かな作業が可能です。資格がいらず騒音も発生しないため、DIYなどでも気軽に利用できます。
また、消耗しないタングステンを用いるため、電極交換などの手間と労力も不要です。ただし、溶接スピードが遅いため、大量生産品の接合には向きません。半自動溶接と比べると、全体の能率に5~10倍くらいの差がでます。発色が強いので、社交マスクの着用も必須です。
融接の一種で、電子ビームを当てて母材を接合します。高温にならず接合面に深く溶け込めるため、精密な溶接をしたいときにおすすめです。ただし、真空中でしか作業できずコストも高いため、一般人には向きません。人工衛星・深海探査船・エネルギー加速器などに使われます。
融接の一種で、レーザーで高温に加熱して母材を接合します。電子ビーム溶接とは異なり、シールド材を用いれば大気中でも使用可能です。接合面に深く溶け込めるため、精密な溶接に向いています。
融接の一種で、アセチレンガスと酸素などの燃焼熱を利用して母材を接合します。アーク溶接とは異なり発色がないため、作業時の視界を確保しやすいのが特徴です。ただし、溶接スピードが遅く、ガス溶接作業者などの資格も必要なため、初心者には向きません。溶接材を供給しながら作業を進めるため、ある程度の熟練度も必要です。
圧接の一種で、電流を流したときに発生する抵抗熱で母材を接合します。溶接スピードが速く、自動車のボディ部分の溶接に利用されています。大量生産に向いており、産業ロボットで作業するのが主流です。
圧接の一種で、高温で熱した金属を重ね、上からハンマーで叩きながら母材を接合します。青銅器時代に開発された歴史ある技法で、現在でも鋼管や鎖などの製造に使われています。
溶接とは、熱や圧力をかけることで、母材同士をつなげることです。
融接・圧接・ろう接の3種類があり、骨建築・船舶・鉄道・建築機械など、さまざまな構造物に用いられています。
アーク溶接は、代表的な融接で、放電現象によって発生した熱を利用した溶接法です。
放電現象を自発的に発生させる「溶極式」と、他の母材で発生した放電現象を活用する「非溶極式」の2種類があります。
この記事で紹介した「半自動溶接」は溶極式、「TIG溶接」は非溶極式です。
半自動溶接は溶接材が自動供給されるため、大量生産品の溶接に向いています。溶接スピードも早いため、作業効率の向上にも効果的です。
TIG溶接は、電極にタングステンを用いた溶接法です。アーク溶接や半自動溶接より、仕上がりが美しくなります。ただし、溶接スピードが遅いので、大量生産品の接合には向きません。
他にも電子ビーム溶接・レーザー溶接・スポット溶接など、さまざまな溶接法があります。
それぞれのメリット・デメリットを把握して、自分に合った方法を見つけてください。