目次
本記事では、溶接ビードについて、形状や幅・除去/切削の方法を解説します。
溶接は、2個所の部材の接合部に、熱又は圧力、もしくはその両方を加え、必要があれば適当な溶加材を加えて、一体化された1つの部材とする接合方法です。
今回は溶接の中でも溶接ビードについて解説します。
溶接ビードとは?
溶接ビードは、アーク溶接の作業をしている際に金属がみみず腫れのように盛り上がっている部分のことを指します。
他にもパイプ製造時にロール成型後に高周波溶接によりつなぎ合わせを行ったりもします。
盛り上がっていなくても、金属が母材と溶融して元の素材と異なった状態になった部分のことも指します。
ビードカット処理を行うことによって、見た目を良くみせるようにします。
溶接ビードの様々な形状
溶接ビードは、面の強化や見た目・外観の見栄えも良くする目的として作業され、ひも出し加工と言われることもあります。
今回は、溶接の中でもアーク溶接での溶接ビードの形状をご紹介していきます。
ビード形状は、電流を流す量によって形状が変化していきます。
電流が大きいと窪みも大きくでき、小さい電流の場合だと小さな形状ができるためどのようにするかは作業員の腕の見せ所です。
電流の大きさでどのようにビード形状が変化するのか分からない方にも分かりやすくした図が以下となりますので参考にしてください。
また、溶接時の欠陥で一般的にオーバーラップと呼ばれる形状不良が代表的に多いです。
特徴として、溶接金属が母材に重なるのが特徴な形状不良になります。
溶接ビードの適切な幅
ここでは溶接ビードの適切な幅をご紹介していきます。
主にすみ肉溶接(ビード)の太さの幅をお伝えします。
良い溶接かどうかを見るポイントの1つの方法として「溶接の肉の太さが適正か?」という判断基準があります。
大雑把な判断基準は「薄い方の鉄板の厚みの7割が脚長(きゃくちょう)と呼ばれる長さになっているのか?」が大雑把な判断材料になります。
例えば、鉄板の厚みが12ミリだと、脚長は8ミリくらいになるわけです。
もう少し進んで、「脚長」では少しわかりにくいと思ったらナナメから見た幅も参考にしていきます。
溶接の断面はざっくり言うと二等辺三角形のため、ナナメの幅は脚長の1.4倍になります。
実際には溶接部に働く応力から脚長を計算して、なるべく少ない溶接量にすることがいいとされています。
溶接の肉が太すぎても(熱を加えすぎても)細すぎても(鉄同士が溶け込んでいない)よくありません。
職人さんはそういった計算の中で、あえて細くしている場合もありますので、一概には言えません。
しかし、一般の方が溶接に挑戦する場合、とりあえずの目安とするところは、このような太さになっているのかをまずは確認するようにしましょう。
溶接ビードの除去/切削の方法
ここでは、溶接ビードの除去方法、切削の方法をご紹介していきます。
なぜ溶接ビードが発生するのか、その正体はアーク溶接を作業する際に使用する溶接棒(ワイヤー)が原因となります。
アーク溶接は、このワイヤーを溶かす事で溶接している為、ワイヤーが溶けて溶接されたという事は、溶けたワイヤー分の質量も増えていきます。
この部分が一般的に溶接ビードと呼ばれます。
溶接ビードを除去するには?
溶接ビードを除去するには大きく分けられると3つの除去方法があります。
1つ目はビード部を圧延する方法、次にビードを潰すやり方、そして切削機によりビード部を削り取ってビードを除去する方法となります。
- ビード部を圧延
- ビードを潰す
- ビードを切り取る
3つの方法にはメリットとデメリットがあり、一般的には以下の様に考えられています。
除去方法 |
メリット |
デメリット |
圧延 |
外見の仕上がりが良い |
導入コストが高い/質量増加 |
ビードを潰す |
加工が簡単でスピードが早い |
仕上がり完成が荒い/質量増加 |
切削 |
仕上がりが綺麗/コストが安価 |
削りカスがでやすい |
上の図のように、ビードを除去するやり方はいくつかあり、他にもやり方は考えられますが、多くの業界において溶接ビードを除去する場合は切削というやり方をする場合がほとんどです。
削りカスが出るのですが、作業性やコスト、生産性に優れており、溶接ビードで増加した質量の補正が出来るためです。
とはいえ、業界や対象物によって求められる優先順位が異なる為、ケースによって様々になります。
グラインダーの種類を紹介
グラインダーは、研削盤の種類の1つで、研削用の砥石を高速で回転させて、素材の表面を切断・研削・研磨する工作機械です。
研削盤には、機械研削盤と自由研削盤があり、円筒研削盤や平面研削盤といった研削機械が機械研削盤に分類でき、ポータブルグラインダーや卓上グラインダーといった機械が自由研削盤に分類できます。
ここでは、自由研削盤に分類されるグラインダーについてご紹介していきます。
自由研削盤は、機械式研削盤に比べて比較的安く手に入れることができて、すぐに加工に移れるのですが、その反面加工中は火花が出やすく高温の切りカスが出るのでケガする可能性もあります。
初めて使用する際には細心の注意を払い、経験者の教えを受けてから作業するようにしましょう。
ディスクグラインダー
ストレートグラインダーと同様に主軸の先端に砥石をつけて高速回転させて加工する電動工具になります。
ストレートグラインダーは、円筒形の砥石ですが、ディスクグラインダーでは、ディスク状(円盤状)の砥石を使って研磨・研削・切断加工ができます。
現場では、このディスクグラインダーのことを他にサンダーと呼ぶ人が多いです。
主な用途は鉄筋や全ねじ棒、アングル材など金属の切断やバリ取り、溶接部分の仕上げなどの磨きやタイル・レンガ・コンクリートなどの使用寸法を合わせる切断、塗装はがし、汚れ落とし、サビ落としなどにもよく使われます。
アングルグラインダー
アングルとは、角度のことで、角度のついたグラインダーをアングルグラインダーと呼びます。
振動の少ないエアー式の機種がたくさん発売されていて研磨、サビ取り、金属素材の研削に使用しようすることが多いです。
垂直と地面の壁面の作業や、ストレートグラインダーでは、ひっかかる難しい狭い場所での作業にも簡単に行うことができます。
ストレートグラインダー
別名でポータブルグラインダーとも言われています。
ハンディサイズの電動工具で、回転する主軸の先端に円筒形の砥石を取り付けて高速に回転させて加工していきます。
ディスクグラインダーは、円盤状の砥石を取り付けますが、ストレートグラインダーでは、円筒形の交換用砥石を取り付けて素材の研削、バリ取り、研磨などに使用します。
ここ最近ではコードレスタイプも販売されています。
卓上グラインダー
卓上グラインダーでは、機器を卓上(机上)に固定したまま、回転する砥石に素材を近づけて加工するタイプのグラインダーになります。
ベンチグラインダーともいい、用途によってベルトグラインダー、バフグラインダー、両頭グラインダーといった種類があります。
金属を切断したときに切り口に発生するバリの研削除去や金属材料の細かな成型作業、ノミやカンナなどの刃の荒研ぎ、バフを取り付けての金属磨きなどによく使用されます。
ベルトグラインダー
エンドレスに回転するベルト状の研磨ベルトに工作物を押し付けて加工する工作機械をベルトグラインダーといいます。
工作機械で加工した素材の面取り、研削、研磨加工やバリ取りで使用していきます。
バフグラインダー
ベルトグラインダーや両頭グラインダーなどで研磨加工した素材の表面仕上げ、鏡面化に使用する工作機械がバフグラインダーです。
異なる粗さのフェルトや布製のバフを両端に取り付けて素材を近づけて加工していきます。
両頭グラインダー
機械を卓上に設置して、左右両端に回転砥石を取り付けた工作機械を両頭グラインダーといいます。
異なる粗さの砥石を使い分けできるので、効率良く加工できて便利です。
固定できないような施盤バイトや、小さな素材のような工具でも卓上グラインダーで簡単に加工できます。
主に、工具の荒削り、バリ取り、金属素材の端面研削などの用途でよく使用されています。
高速切断機
アングル材・角材・鉄パイプなどの鉄材の切断に多く使用するもので、本体に取り付けられている砥石が高速回転することによって、素材が触れるだけで切断できる機械が高速切断機です。
高速切断機は切断物を本体に固定してカットできるので、安全かつ正確に加工することが可能です。
溶接ビード検査
溶接ビード検査や形状の仕上げ・製品の寸法などの検査は、ゲージやノギスなどの使用した手計測で行われていることが多く、検査員の経験・技能によって値やビードの仕上げもバラつくことがありました。
さらに記述間違い・記録漏れなどが起こる可能性もありました。
しかし、近年では溶接ビード用検査機や3Dプリンタも普及してきたので、安定した検査ができるため品質の向上や、検査ミスによる不具合品が入るのも防止が期待できます。
検査と同時に結果の記録することも可能で、記録漏れの防止と管理も可能になりました。
また、3Dプリンタを使用して制作することで、軽量かつ持ちやすくスタイリッシュな計測用レーザーで、視認性に優れて検査できるため高精度に計測することができます。
まとめ
本記事では、溶接ビードや形状や幅、除去方法、グラインダーの種類について解説しました。
溶接には色んな種類がありますが、一般的に溶接ビードが発生する抵抗溶接の一部にアーク溶接が挙げられます。
ただ、溶接を行う際に発生する溶接ビードにはどの業界も課題の1つとなっています。
厳密には、溶接ビードを発生させない方法もありますが常に研究されていますが、効率的に考慮した上で実用化できるほど技術は確立できていないのが現状です。
そのため、現代では溶接ビードをキレイに除去していくのが主流となっています。
技術は日々進化しているので将来的には溶接ビードを除去しないでも済むことができると良いですね。