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2020.01.30 溶接topics

ステンレスとは?鉄との違いや接触時を解説【見分け方/強度】

目次
ステンレスは、他の金属と比べ歴史が浅い金属ですが、実はその種類はJIS規格だけで100種類以上もあると言われています。 本記事では、私たちの日常生活の中でも多く使用されているステンレスの特徴や、他の金属との違いについて解説します。

ステンレスとは

ステンレスは、鉄に金属元素の1つであるクロムやニッケルを合わせて作られた「合金鋼(特殊鋼)」の一種です。 ステンレスの歴史は、100年程度とまだ若い素材ですが、その種類はJIS規格だけで100種類以上、各メーカーで独自に開発されたものを含めると200種類以上あるとも言われています。   それらは含有される金属によって、主成分である鉄にクロムだけを混ぜたものと、クロムとニッケルを混ぜたものの2つに分けられ、そこから更に「オーステナイト系」「フェライト系」「マルテンサイト系」「析出硬化系」「オーステナイト・フェライト系(二相系)」の5つの系統に分類されます。   5つの系統は、それぞれの系統によって異なる特徴を持っているので簡単に解説します。  

①オーステナイト系(クロム・ニッケルステンレス)

オーステナイト系は、全てのステンレスの中で、最も生産量が多い金属です。 ステンレスの中でも特に錆びにくく、金属アレルギーを引き起こす原因とも言われるイオンが溶けだしにくい特性があるので、アクセサリーや医療用のメスなどにも用いられています。   一般的に磁性は無いとされていますが、強い冷間加工を加えると微弱な磁性を持つようになります。 また、冷間加工で強度を高めることが出来るのも大きな特徴です。   低温の環境下でも衝撃への耐性が低下せず、高温の環境にも強いので低温用材料や耐熱網にも使用出来ます。    

②フェライト系(クロムステンレス)

フェライト系は、クロムだけを混ぜている為、ニッケルを含むステンレスよりも比較的安価な点が特徴です。   ただし、クロムの配合が多くなると脆く、強度の低下に繋がる為強度が必要とされる箇所への使用には、注意が必要です。 また、熱処理を行っても硬くなりにくく、磁性があります。 安価で錆びにくいので、自動車部品や建築物の内装、電気器具の部品などにも多く使用されています。  

③マルテンサイト系(クロムステンレス)

マルテンサイト系は、元々は硬くて脆い素材ですが、熱処理を行うことによって強度や硬さを高めることが出来ます。 錆びにくさは、他の系統のステンレスよりもやや劣りますが、硬くて摩耗にも強いので、ブレーキディスクやノズル、工具などに使用されます。  

④析出硬化系(クロム・ニッケルステンレス)

析出工科系とは、ステンレスを析出(せきしゅつ)硬化することによって、更に強度を高めたステンレスのことを指します。 同じく高強度が特徴のマルテンサイト系ステンレスよりも錆びにくく、溶接がしやすいので、エンジンや航空機などの構造物に用いられます。  

⑤オーステナイト・フェライト系(二相系)(クロム・ニッケルステンレス)

オーステナイト・フェライト系(二相系)は、オーステナイト系とフェライト系の中間的な性質を持ち、熱交換器や排煙脱硫装置などに使用されています。 このオーステナイト・フェライト系と析出硬化系のステンレスは、製造が難しいことに加え原材料が高い為、他の系統のステンレスと比べると高価になります。  

ステンレスの特徴

次にステンレスの特徴を解説します。大きな特徴は5点です。
    • 錆びにくい
    • 保温性が良い
    • 熱が伝わりにくい
    • 加工に技術を要する
    • リサイクル出来る
 

①錆びにくい

ステンレスについて誰かに説明するとしたら、多くの人が「錆びにくい金属」という点を挙げるのではないでしょうか?   ステンレスは英語では「Stainless steel」と表記され、直訳すると「錆びない鋼」という意味になります。 その名前からも分かる様に錆びにくいという点は、ステンレスの最も有名で代表的な特徴と言っても、過言ではありません。 この錆びにくいという特徴から、ステンレス素材はキッチンなどの水回り製品に多く用いられます。 鉄などの金属は時間が経つと少しずつ錆びてきますが、この錆びというのは、空気中の酸素や水と金属が反応し、酸化したことが原因で発生するのです。その為真空状態では、時間が経っても錆びは発生しないと言われています。   ステンレスが錆びやすい鉄を主成分としているにも関わらず、錆びにくいのはクロムを混ぜていることが関係しています。 なぜなら、ステンレスに含まれているクロムは、空気中の酸素と結合すると「不受態皮膜」と呼ばれる、非常に薄くて強靭な酸化膜を金属表面に作り出すからです。 そして、この皮膜がステンレス表面を保護すると、ステンレスそのものが錆びの原因となる空気と直接接触することがなくなる為、ステンレスは錆びにくいのです。 その上、もしこの不受態皮膜が損傷しても、酸素がある環境下であればまた瞬時にクロムが酸素と結合して皮膜を作り出します。 つまり、常に空気から守られた状態を維持することが出来るのです。 この皮膜の自己再生能力があるからこそ、ステンレスは、長期間に渡って錆びにくく美しい状態を維持出来るのです。   ステンレスは、このようなメカニズムにより、手入れがしやすく、良好な状態を保ちやすい金属なのですが、あくまで「錆びにくい」のであって「錆びない」訳ではありません。 間違った使用方法やメンテナンスの仕方により、錆びてしまうこともあるので注意が必要です。   ステンレスが錆びてしまう原因として多いのは、ステンレスの表面に別の金属が接触している場合や、汚れや水分が付着している場合などです。 ステンレスの表面に別の金属が接触していると、その金属の腐食(錆び)が促進され、その錆びによってステンレス自体も錆びてしまいます。 また、ステンレス表面に汚れや水分が付いたままになっていると、表面を保護する不受態皮膜を作り出すことが出来ないので、ステンレスそのものが空気に触れてしまい、錆びやすくなってしまいます。   ステンレス素材の物を使用したら、柔らかいスポンジなどで汚れをしっかり洗い流した後、水気を拭き取って乾燥させ、保管する際にも金属同士が触れないように注意しましょう。 この点を気を付けるだけでも、良い状態を保ちながら、長期間使用することが出来ます。  

②保温性が良い

ステンレスは、ステンレス製のマグカップやタンブラーに熱いコーヒーを入れると、時間が経っても温かさを保つことが出来るように、非常に保温性が良い金属です。 ただし、保温性が良いということは、放熱性が低いということなので、熱を持ちやすい車のエンジンなどには不向きと言えます。  

③熱が伝わりにくい

金属は、一般的に熱が伝わりやすい物が多いですが、ステンレスは熱が伝わりにくいという特徴があります。 これは、金属中の熱を伝える分子の動きを、ステンレスに含まれているクロムやニッケルが妨げるからです。   ステンレス素材を取っ手部分だけに使用しているフライパンなどは、安全で快適に調理をすることが出来ます。  

④加工に技術を要する

ステンレスは、加工しにくい難削材としても知られており、加工する際には技術や注意が必要です。ステンレスを加工しにくくしている主な理由は、3つ挙げられます。   1つ目の理由は、金属特有の「加工硬化」という特性です。 この「加工硬化」とは、加工する際、力が加わることによって金属が固くなってしまう現象のことを言います。 長時間に渡る切削作業は、加工硬化の影響もあってより作業効率が低下する傾向にあります。   2つ目の理由は、錆びからステンレスを守る不受態皮膜の影響によるものです。 このステンレスを保護する皮膜は、錆びだけでなく加工する際にも表面を守る力として働くので、加工の妨げとなります。 また、不受態皮膜は損傷を受けても、すぐに新たな皮膜が作り出されるので、研磨では不受態皮膜を除去しながら短時間で次の工程に進まなければいけません。 時間がかかってしまうと、不受態皮膜に加え、加工硬化の影響も受けて、更に作業を進めにくくなってしまいます。   3つ目の理由は、ステンレスの種類により、切削や研磨、溶接の際の特性が異なる為、特性を理解しそれに合わせて工具や加工法を変える必要があるということです。 これらの理由から、他の金属よりも加工が難しいステンレスを加工する際には、正しい知識と熟練された技術が必要となります。  

⑤リサイクル出来る

ステンレスは、最小限の手入れで長期間使用出来る非常に扱いやすい素材です。 そして、あまり知られていませんが、寿命を迎えた後もそのほとんどが溶解され、再利用されているエコな素材でもあります。  

ステンレスの強度

ステンレスは、基本的に強度が高く、スチールと同等の強度を維持する場合にスチールよりも薄く出来る為、軽量化が見込める点は大きなメリットです。 また、ステンレスの種類によっては、熱処理を行うことで更に強度を上げることが出来ます。  

ステンレスの見分け方

私たちが生活する中で身近な金属である鉄やアルミとステンレスには、目安となる基本的な見分け方が2つあります。   まず、1つ目が、磁石を用いた方法です。 磁石がくっつけば鉄の可能性が高く、くっつかなければアルミかステンレスの可能性が高くなります。   そして、2つ目が重さです。 体積が同じ場合、鉄とステンレスは同じくらいの重さになるのに対し、アルミは3分の1程度の重さしかないので、軽い場合はアルミの可能性が高くなります。 しかしながら、ニッケルを含まないステンレスは磁石がくっつくことがあるように、ステンレスの種類によっては、この見分け方が当てはまらない場合もありますので、あくまでも、1つの目安として考えてください。  

ステンレスと他の金属との違い

ここでは、身近な金属である「鉄(アイアン)」と「鋼(スチール)」と「ステンレス」との違いについて解説します。  

ステンレスと鉄(アイアン)の違い

実は、純度100%の鉄というのは、あまり目にすることがありません。 なぜなら、純度100%の鉄は炭素が多く含まれている為非常に硬いのですが、硬さがあるということは同時に強度が低く脆くなってしまうからです。   金属を加工したり溶接したりする際に、脆い素材は、扱いにくい上に、仕上がった製品の精度にも影響します。 その為、鉄は、炭素や不純物を取り除いて、強度を高めます。 そうして出来上がったのは、鉄ではなく金属の分類上は鋼となります。 つまり、私たちが鉄だと思っている金属のほとんどは、鉄ではなく鋼の一種なのです。 ステンレスとの違いを説明する前に、鉄は鋼の一種だという説明をしましが、ここでは一般的な合金である鋼と区別する為に、鉄という表記で説明を続けます。   ステンレスと鉄の違いは以下の通りです。
  • 1.錆びやすさ
    • ステンレス:錆びにくい
    • 鉄:錆びやすい
  •  2.磁石がくっつくかどうか(磁性)
    • ステンレス:くっつかない(種類による)
    • 鉄:くっつきやすい
  • 3.加工のしやすさ
    • ステンレス:加工しにくい
    • 鉄:加工しやすい
 

ステンレスと鋼(スチール)の違い

先ほど鉄だと思っていた金属は、実は鋼の一種だと説明しました。 そもそもこの鋼という金属は、2%以下の炭素を含む鉄の合金のことを指します。 その為、何をどのように配合するかによって性質は大きく変わりますが、今回は缶などに用いられる一般的なスチールを基準に、ステンレスとの違いを解説します。   ステンレスと鋼の違いは以下の通りです。
  • 1.錆びやすさ
    • ステンレス:錆びにくい
    • 鋼:錆びやすい
  • 2.金額
    • ステンレス:高価
    • 鋼:ステンレスよりも安価
  • 3.熱の伝わりやすさ
    • ステンレス:伝わりにくい
    • 鋼:伝わりやすい
  • 4.加工のしやすさ
    • ステンレス:加工しにくい
    • 鋼:加工しやすい
 

まとめ

  • ステンレスは鉄にクロムだけを混ぜたものと、クロムとニッケルを混ぜたものの2つに大別され、更に5種類の系統に分類される。
  • ステンレスの特徴は大きく分けて5つ。
    • 錆びにくい
    • 保温性が良い
    • 熱が伝わりにくい
    • 加工に技術を要する
    • リサイクル出来る
  • ステンレスの一番の特徴は「錆びにくい」ことだが、他の金属の接触などにより錆びが発生する場合がある。
  • ステンレスの加工は難易度が高く、知識と技術が必要となる。
  • 磁石がくっつくかどうかと、重さで、ステンレスと鉄やアルミを見分けることが出来る。
  • 鉄や鋼と比較しても、ステンレスは錆びにくく、メンテナンスがしやすいが、加工が難しい点が特徴として挙げられる。
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