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2020.03.05 溶接topics

製缶とは?意味や板金加工との違いについて

目次

製缶の意味や内容をご存知でしょうか。製造分野には専門用語が多いため、どの用語がどんな意味を持つのか分かりづらいです。

本記事では、製缶の概要や板金加工との違いについて解説します。また、具体的な製造工程や注意点なども紹介しますので参考にしてください。

製缶とは

製缶とは、金属板をタンク・水槽・鉄骨・船舶部品・クレーン装置・鋼材・形鋼などに溶接加工することです。

金属板は、鉄やステンレスなどが多く用いられ、工事現場にあるH型の鉄骨も、もともとは丸い鉄棒を加工しています。

 

溶接は、金属を局所的に溶かし、溶接棒などを添加して接着する「アルゴン溶接」「アーク溶接」を使うのが一般的です。

他にも、ガス・レーザー・TIG・半自動・スタッド・MIG・MAG・CO2・電子ビーム・ファイバーレーザー・セラミック・YAGレーザー・溶射など、多様な手法が知られています。

製缶板金加工と板金加工の違い

製缶板金加工と板金加工の違いは、使用する金属板の厚さです。

業界として明確な基準はありませんが、一般的に7mm以上が製缶板金加工・7mm以下が板金加工とされています。

製缶板金加工の方が、板金加工より複雑で大きなものを製造できるのが特徴です。

 

製缶板金加工の製品

製缶板金加工の製品は、製造現場などで使われるものが多いです。

以下に代表的な製品をご紹介します。

  • ドラム缶
  • ガス容器のボンベ
  • 産業プラント用タンク
  • 作業用の架台
  • スロープ架台
  • 階段の手すり
  • 産業用ダクト
  • 機械用筐体
  • ベルトカバー
 

このように製缶板金加工は、国内の重工業を土台から支えています。

基本的には機械で作業することが多いですが、最終的な仕上がりは職人の腕しだいです。

そのため工員は、日々切磋琢磨して技術の向上に励んでいます。

 

製缶の流れ

製缶は、複雑な工程を経て行われます。大まかな作業手順は、以下の通りです。
  1. 製缶図から切板一品図に展開する
  2. 材料を溶断する
  3. 材料に穴あけする
  4. 材料を曲げ加工する
  5. 溶接する
  6. 完成品を組み立てる
  7. 検査をする
ここでは例として、通常のドラム缶の製造工程を解説します。

 

胴部分

  1. 厚さ1.2mmのスチール板をローラで平面にする
  2. スチール板をドラム缶の胴体部分の長さに切る
  3. スチール板を円筒状にして、つなぎ目を溶接する
  4. 上下にフランジ加工を施し、はり出し部分をつくる
  5. ビーディングを施し、胴体部分に出っ張りをつける
  6. 溶接部に異常がないか目視で確認する
 

底・ふた部分

  1. スチール板を、底及びふたの大きさに合わせて丸く切り取る
  2. 残ったスチール板から口栓の材料となる部分を切り取る
  3. 最初に切り取った円板を、底用及びふた用に分ける
  4. ふたに口栓の穴を開ける
  5. 座金を取り付ける
 

胴・底・ふた共通

  1. リン酸亜鉛溶液で表面をコーティングする(化成処理)
  2. 水洗いし、乾燥させる
  3. 底及びとふたの縁にシール剤を塗りこむ
  4. 胴体の一方の開口部にふたをはめ、巻き締める
  5. 胴体部分をひっくり返し他方の開口部を上にする
  6. 胴体の他方の開口部に底板をはめ、巻き締める
  7. エアーをいれ、ドラム缶内部に漏れがないかを確認する
  8. 口金に紙のシールを張り密閉する
  9. 全体にさび止め防止の外面塗装をドラム缶の全体に施す
  10. 熱を加えて塗装を焼きなおす
  11. 口金のシールを剥がす
  12. 乾燥した空気をいれ、ドラム缶内部を乾燥させる
  13. 強い光を当て、内部に異常がないか目視確認する
  14. 口金に栓をする
  15. 最終的な外観検査をする
  16. 既定の重さに達しているかを検査する
  17. 製品検査を行う
 

最初につかうスチール板はペラペラと柔らかい金属ですが、上記のような工程を経ると強度が格段に上がります。

大型のドラム缶は、人の手が加わることも多く、通常のドラム缶ほど機械に頼りません。

 

製缶板金加工の品質向上にはVA/VEを徹底する

VA/VEとは、コストを抑えつつ完成品の価値を最大化することです。

製缶は、工程が複雑で材料も大量に消費するため、無駄に生産が発生するとコスト過多となります。

 

VA/VEは、このような無駄を防ぐための取り組みで、以下を目標にすると良いとされています。

  • 溶接箇所を少なくする
  • 材料の種類を少なくする
  • 小さな部品を使うのはできるだけ避ける
  • 二次的な加工はできるだけしない
 

溶接は、工数のかかる複雑な作業のため、できるだけ工程を少なくします。

手間と労力を大幅に削減できるため、設計の段階から省略できないか意識します。

また、材料の種類が多いと、容器への移し替えや部品の交換作業などが発生し、コストが増大します。

 

原料費も増えるため、材料の種類は少なめにしましょう。

小さい部品が増えると、作業時に加工箇所が見えづらくなり、ミスが発生しやすくなります。

そのため、製造時では、できるだけ小さい部品を使わないようにしてください。

部位ごとに適正部品を把握して、可能な限り大きい部品で対応します。

 

次に、二次的加工とは、一度製造したものを再加工することです。

基本的に手作業となり、熟練度が低いと品質が低下するため、できるだけ工程から省きます。

設計段階から計画されていたものが該当し、製造後に瑕疵が発覚し、再加工が必要になった工程などは含まれません。

 

業者によって向き不向きがある

製缶を依頼する時は、その業者の得意分野を把握しましょう。

例えば、製缶板金加工と板金加工の目安は一般的に7mmが目安ですが、中には9mmに対応している板金加工業者もいます。

しかし、それはあくまで対応しているだけであって、得意分野ではないため、実際に依頼すると料金や納期面で満足のいかないケースが多いです。

そのため製缶を依頼する際は、その業者が製缶板金加工と板金加工のどちらを専門としているのか確認しましょう。

 

加工指示をしっかりする

製缶業者に依頼する場合、加工指示を設計図にしっかりと記載しましょう。

指示が曖昧だと、オーダー通りの製品が納入されない可能性があります。

 

例えば、機械設備に加工限界を設定している業者では、制限以上の材料を加工できません。

仮に加工できたとしても、別途加工済みの材料を仕入れ他の製品と組み合わせる必要があるため、製品品質がバラバラになりがちです。

この時設計図に詳細な加工指示を記載しておけば、業者も迷わず必要な加工処理を施せます。

指示がない場合、加工方法の確認に手間がかかり、作業自体がストップするので注意しましょう。

 

曲げ加工は惜しまない

コスト削減のために曲げ加工を少なめにする設計者もいますが、これはあまり意味がありません。

少ない曲げ加工は、湾曲を発生させやすく、強度的にも問題があります。

曲げ加工は、製品の精度や頑丈さを決める重要な要素なので、最低でも25mm以上はとりましょう。

 

まとめ

製缶とは、鉄やステンレスなどの金属板を、タンク・水槽・鉄骨・鋼材などに加工することです。

製造現場で使われる道具を多く製作するため、国内の工場現場には欠かせません。板金加工とは異なり、7mm以上の金属を用い複雑な形状物も製作できます。

 

製缶の流れは以下です。

  • 製缶図から切板一品図に展開する
  • 材料を溶断する
  • 材料に穴あけする
  • 材料を曲げ加工する
  • 溶接する
  • 完成品を組み立てる
  • 検査をする
 

製缶板金加工の品質向上には、VA/VEを徹底しましょう。

VA/VEは、以下の参考にしてください。

  • 溶接箇所を少なくする
  • 材料の種類を少なくする
  • 小さな部品を使うのはできるだけ避ける
  • 二次的な加工はできるだけしない
 

製品加工についての理解を深め、製造現場の効率化を目指してください。

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