目次
目次
溶接とは?
- 溶接の仕組み
- 溶接の種類
1 アーク溶接
- アーク溶接の溶接機の種類
- アーク溶接の溶接機の使い方
2 半自動溶接
- 半自動溶接の溶接機の種類
・ガスシールドアーク溶接機
・ノンガス溶接機 - 半自動溶接の溶接機の使い方
3 TIG溶接
- TIG溶接の溶接機の種類
- TIG溶接の溶接機の使い方
4 スポット溶接
- スポット溶接の溶接機の種類
- スポット溶接の溶接機の使い方
5 レーザー溶接
- レーザー溶接の溶接機の種類
- レーザー溶接の溶接機の使い方
6 ガス溶接
- ガス溶接の溶接機の種類
- ガス溶接の溶接機の使い方
まとめ
溶接機の使い方とは?溶接機の種類や使い方
溶接は、材料に応じて接合部分が接合を保つことができるように、熱や圧力を加えて接合していく方法です。初心者に溶接は難しいというイメージがありますが、近年は自宅でも溶接をしている人が増えています。
本記事では、溶接方法の種類、溶接機、溶接のやり方について解説します。
溶接とは?
溶接は、「工業製品の製作」「金属を組み合わせた雑貨の作成」「DIYでさまざまなもの加工」など幅広い分野において用いられている接合方法です。溶接は、激しい火花をパチパチと鳴らし、金属を溶かしながら行うというイメージがあることから、溶接をしてみたいと思っている初心者にとってはハードルが高いでしょう。しかし、近年はDIY向けの家庭用電源でも使うことができる比較的簡単な溶接機もあります。
金属素材を使って溶接機をうまく使いこなすことができれば、少し本格的なDIYができるようになるでしょう。また、アーク溶接ならば資格も必要としません。安全に取り組み基本をしっかりと守れば決して難しいものではありません。
溶接の仕組み
金属素材同士をなんらかの方法で「熱」や「圧力」を加えることで一体化し接合させることが、溶接の仕組みです。強度の高い金属同士も溶接することで一体化できる事が、大きなメリットです。ボルトやビスでの接合は、金属のサビや緩みから外れてしまう可能性があります。溶接すればそのような危険性は低くなります。
さらに、溶接した部分は接合面の素材が一体化するので、高い強度を得ることができます。一般的な溶接方法を分けると以下の3つの方法になります。
- 金属を熱で溶かす溶接・・・一般的な溶接方法でアーク溶接が代表的な方法。
- 圧接・・・金属同士に圧力をかけガスなどで加熱し一体化させるもの。
- ろう接・・・ろう付けやはんだ付けなど言われる金属母材よりも低い融点の金属を溶加材を溶融させ接合面のすき間を埋め接合するもの。
溶接の種類
細分化すると非常に種類の多い溶接ですが、中でも代表的な溶接方法を6つ解説します。- アーク溶接
- 半自動溶接
- TIG溶接
- スポット溶接
- レーザー溶接
- ガス溶接
①アーク溶接
アーク溶接は、もっとも一般的な溶接方法です。アーク放電の熱を熱源として利用し、金属を溶かし接合する方法です。アーク放電は、空気中に発生する電流を指す放電現象です。
空間に離れた2つの電極に電圧をかけると、空気の絶縁が破壊されます。すると、2つの電極の間に電流が発生し、同時に強い光と高い熱が発生し弧を描きます。
発生した弧をアークといいます。このアークが発生させる熱を熱源として利用した溶接方法がアーク溶接です。
アーク溶接の溶接機の種類
アーク放電を熱源に利用し溶接が行える機器をアーク溶接機といい、現在最も多く使われている溶接機です。アーク放電による温度は、5,000~20,000℃まで達します。鉄は、1,500~2,800℃が融解温度です。アーク溶接機は、この鉄の融解温度で、接合することができるのです。
アーク溶接の溶接機は、大きく分けると3つあります。
- 被覆アーク溶接機・・・金属の心線に被膜剤であるフラックスをかぶせた溶接棒を使ってアーク放電を発生させる。
- マグ溶接機・・・炭酸ガスやアルゴンガスなど、不活性ガスを混合しシールドガスとして利用する溶接機。
- ティグ溶接機・・・タングステンを放電用電極として使用している。また、アルゴンガスやヘリウムガスなど不活性ガスをシールドガスとして使用している溶接機。
アーク溶接の溶接機の使い方
- アーク溶接は電極(溶接棒またはワイヤー)にプラス、母材にマイナスの電圧をかけ母材から電極へのアークを発生させます。
- アーク溶接棒を溶接機本体から伸びているトーチに取り付け、溶接部位に擦り付けアークスタートをします。
- アーク母材と同時に溶接棒も溶かしながら溶接していくため、頻繁に溶接棒を交換する必要があります。
- アークの出力電流は約5A~1,000Aです。出力電圧は8~40Vほどになります。
②半自動溶接
半自動溶接ははんだごてを使った加工方法と同じように、トーチなど加熱器具で融解金属を溶かし2つのものを接合する方法です。 溶接の基本的な技術を応用した方法ですが、半自動溶接はトーチで加熱し、溶かすワイヤーが自動で供給される半自動溶接機を使うものをいいます。半自動溶接の溶接機の種類
半自動溶接の溶接機にはいくつか種類がありますが、それぞれ対応する溶接方法は異なります。ガスシールドアーク溶接機
半自動溶接機の中でよく使われている溶接機です。このタイプの溶接機は、トーチの先端部分から溶接ワイヤーが出てくる構造をしています。CO2溶接、MAG溶接、MIG溶接の各溶接方法に対応できる溶接機です。ただし、中にはこれらの3つの溶接方法のうち一部のみ対応というものもあるため、購入時には対応する溶接方法を確認する必要があります。
ノンガス溶接機
ガスを使わずに溶接を行う溶接機です。ノンガス溶接機はノンガスワイヤーが使えるようになっているため、溶接機と別にガスを用意する必要がありません。ただし、ノンガス溶接機を使用する際には、ヒュームと呼ばれる溶接時に発生する煙のようなものや、スパッタという溶接部分に金属粒が多く残るというデメリットもあります。
半自動溶接の溶接機の使い方
- 半自動溶接機の溶接トーチを本体につなぎ電源ケーブルをコンセントにつなげます。
- 本体カバーを開きワイヤーをセット。トーチの中のチップを取り外し、ワイヤー送りボタンをトーチからワイヤーが出るまで押します。
- ワイヤーの余分な部分を切り、チップを取り付けます。
- アースのクリップを母材に取り付けます。
- 出力を調整していきます。
- ワイヤーがチップから1cm程度になるようにカットします。
- 点付け同様に近づけ距離を保ちながら溶接個所に沿って溶接します。
③TIG溶接
TIG溶接は電極にタングステン電極棒を使用し電極から発生する高温のアーク光を母材にあて金属を溶かし液体にして金属同士を接合させる溶接法です。アーク光で金属を溶かす際、母材が酸素に触れ酸化するため作業時にはアルゴンガスを出しながら溶接する必要があります。
TIG溶接の溶接機の種類
TIG溶接機は大きく分けると200V専用、100V/200V兼用、ガソリン・ディーゼル3つに分けることができます。また制御方式もインバーターとデジタルインバーターがあります。溶接条件を記憶・再生できるような溶接管理機能が付いているものもあります。
TIG溶接の溶接機の使い方
- トーチにタングステン電極を4~5mmほど出すように取り付けます。
- トーチのスイッチを入れ、ガスの量を調節していきます。
- 素材に合わせTIG調節器の設定を行っていきます。
- 溶接面を装着し、母材から45度程度の角度からトーチのスイッチを入れ、溶融池(プール)ができたらトーチの反対側から溶接棒を挿し込みます。
④スポット溶接
スポット溶接とは、溶接する金属母材の上下から電極をあて大電流を流し加熱し、冷却、母材を再凝固して、2つの母材を溶接する圧接法です。スポット溶接の特徴は、金属の電力抵抗を利用した溶接法であることです。電流が流れると電気抵抗が起こり発熱するのを利用した溶接法なので、抵抗スポット溶接とも呼ばれます。一般にスポット溶接と言及する場合は、2つの金属母材全面に大電流を流し圧接する抵抗スポット溶接を指します。
スポット溶接の溶接機の種類
スポット溶接機には、ロボットスポット溶接機、マルチスポット溶接機、定置スポット溶接機、ポータブルスポット溶接機などの種類があります。スポット溶接の溶接機の使い方
一般的なスポット溶接機の使い方を解説します。- 電源に接続された電極の間に2枚の金属板を重ね合わせます。
- 溶接したい2片の上下から電極をあて適度な圧力を加えます。
- 大電流を流し発生した熱で金属を溶かして接合します。
⑤レーザー溶接
レーザー溶接は、レーザー光線のエネルギーを利用して行う溶接をいいます。レーザー光線のエネルギーは、パワーが高いので異素材同士を同時に融解させることが可能です。レーザー溶接は、瞬間的に融解させるので、従来の溶接加工に比べ作業もスピーディーにでき、加工時間の短縮も可能になります。また、レーザー溶接は、金属融解時に接合部分にアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを照射し酸化を防ぎます。レーザーの種類は、イットリウム、アルミニウム、ガーネットを使用した個体レーザーであるYAGレーザーと、二酸化炭素を使用した気体ガスとに分別されます。
レーザー溶接の溶接機の種類
レーザー溶接機にはいくつか種類があります。- YAGレーザー溶接機・・・スタンダードなYAGレーザー溶接
- ファイバーレーザー溶接機・・・YAGレーザーと異なるビーム特性と高品質微細溶接を実現
- パルスファイバー溶接機・・・省エネ、完全空冷式の溶接機
- レーザーハンディ溶接機・・・手動によるハンドトーチ操作で簡単に高品質レーザー溶接が可能
レーザー溶接の溶接機の使い方
レーザー溶接機は、非常に高額なため、一般的な家庭溶接機として使用されることはまずありません。レーザー溶接機は、レーザー発振器、光路、集光光学系、駆動系、シールドガス系で構成されています。一般的なレーザー溶接では、レーザー発振器としてCO2レーザー、YAGレーザーがあります。中でもYAGレーザーは大出力化が進んでいるレーザー溶接機器と名かでも代表的なものです。発振器でレーザーが発振され光路を通じて集光光学系に導かれます。
CO2レーザーの場合にはミラーによって折り返しで伝送されます。YAGレーザーの場合にはミラーによる伝送以外に光ファイバーによる伝送も用いられます。集光された状態でレーザーは材料に照射され溶接を始めます。
この時、溶接金属部分の酸化を防ぐため、シールドガスを溶接金属部に吹き付けることが一般的です。そして、駆動系が同することで溶接されていきますが、ジグによってテーブル等に溶接物は固定されています。
溶接形状によっては、溶接材料を押さえるためのジグは専用なものを用意する必要があります。
⑥ガス溶接
ガス溶接は、アセチレンやLPGなど可燃ガスと酸素を利用し発生させた燃焼熱によって接合するものをいいます。ガス溶接は、アーク溶接に比べ接合する時間が長いというデメリットはあるものの、接合部分が見えやすく状態をしっかり確認しながら作業ができることから溶接不良などが少なくなるというメリットがあります。また、ガス溶接は、ガスの供給量の制御は比較的簡単なので加熱調整がしやすく、熱を加えすぎてしまうことによる部品の破損を防ぐこともできます。高熱に弱く割れやすいもの、薄いもの、溶け出す温度が低いものの融合に向いています。
ガス溶接の溶接機の種類
溶接機には、ドイツ式(JISA型)、フランス式(JISB型)があります。使用する可燃性ガスはアセチレン、水素、プロパン、ブタンなどLPガスやメタン石炭ガス、都市ガスなどがあります。ガス溶接の溶接機の使い方
ガス溶接機の使用方法について解説します。- ガスボンベを準備する
ガスボンベは、爆発事故を防止するためにガスボンベの取り扱いは丁寧に行うことが大前提となります。
40℃以下の室温で、日陰となる場所で保管を行うこと、高熱を発する機器を周辺に置いておかないことが重要です。
また、ガスボンベは必ず立てた状態で使用し、作業中に倒してしまった場合には起こした後、5分ほど置いて作業を再開するようにします。 - トーチに点火の後、溶接作業をする
ガス溶接にはトーチを使用します。
作業ごとにトーチの形が異なるものに交換できるようになっているので、作業前に作業内容に合ったものかどうかを確認します。
またトーチに点火する際にはガスボンベのバルブだけを開き専用のライターで火をつけます。
次に酸素ボンベのバルブを開き火力の調整をします。 - 消火作業を行う
溶接終了後は消火をします。
消火は手順を間違えると非常に危険なため、正しい消火手順をしっかりと確認しておきましょう。
酸素によってものが燃焼するため、溶接作業後の作業では酸素ボンベのバルブを最初に閉めます。
その後ガスボンベのバルブを閉めます。
酸素ボンベよりも先にガスボンベバルブを閉めてしまうと酸素の供給が絶えず行われているので「逆火」という現象が発生し、爆発事故の原因となってしまいます。
まとめ
溶接技術は、専門技術というイメージがありますが、技術をつければDIYで作ることができるもののバリエーションも広がります。溶接作業時には、ガスを使用しないアーク溶接は免許、資格は必要ありません。機会があったらDIYなどでアーク溶接にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
- 溶接とは・・・ものとものを接合するための方法
- 溶接の種類・・・以下の6つが主な溶接方法
- アーク溶接・・・アーク放電を利用した溶接方法
- 半自動溶接・・・加熱器具で融解金属を溶かし2つのものを接合する方法
- TIG溶接・・・アーク光で金属を溶かし液体にして金属同士を接合させる溶接法
- レーザー溶接・・・レーザー熱を利用して溶接する方法
- ガス溶接・・・可燃ガスと酸素を利用し発生させた燃焼熱によって接合する方法