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M&Aは必ずしも成功するわけではなく、失敗するリスクも当然潜んでいます。本記事ではM&Aの成功要因・失敗要因とそれぞれの具体的な事例を紹介し、M&Aを行う上で押さえておくべきポイントを紹介します。
M&Aの成功要因
M&Aが成功するための要因は大きく2つあります。1-1:人材管理
M&Aの成功要因の1つとして、人材管理が重要な役割を担っています。 人材の評価方法の検討や再配置、組織文化の共有、コミュニケーションの強化など様々なアプローチを用いて従業員の適切な管理を行いましょう。M&Aによって従業員が不安定な状況に陥ることがないよう、従業員に対して適切な情報提供やキャリアプランの策定などの対策を行うことが大切です。1-2:企業文化
企業文化の適合性もM&Aを成功させるための重要な要素です。 企業文化は、企業の価値観や行動規範、社員の思考や行動パターンなどを表すものであり、M&Aによって統合される2つの企業の文化が異なると、M&A成立後に大きな影響を与える可能性があります。企業文化の適合性が重要である具体的な理由を以下に挙げます。1-2-1 同じ目的を追求する
2つの企業が統合することで、より大きな目的を達成することができます。しかし、2つの企業の文化が大きく異なる場合、同じ目的を追求することが難しくなる可能性があります。統合後のビジョンや目的が明確であることが重要です。1-2-2 組織の統合
M&Aによって統合される企業の文化が異なる場合、組織の統合が困難になります。組織の統合には、従業員のリストラや再配置、業務プロセスの再構築、情報システムの統合などが含まれるため、文化の適合性がなければ統合は困難でしょう。1-2-3 社員のモチベーション
文化の適合性がない場合、社員のモチベーションやパフォーマンスが低下する可能性があります。2つの企業の文化が大きく異なる場合、社員の思考や行動パターンも異なるため、業務効率やパフォーマンスが低下する可能性があります。1-2-4 顧客との関係性
企業の顧客との関係性にも影響を与えます。M&Aによって統合される企業の顧客層が異なる場合、顧客に対するサービスやプロモーションの戦略にも差異が生じるため、顧客ロイヤルティーが低下する可能性があります。
以上のように、M&Aの成功には統合される2つの企業の文化が適合し、一致したビジョンや目的を持つことが重要です。そのため、M&Aを行う企業は事前に統合する企業の文化や価値観を調査し、適合性を確認しておくことが必要です。
M&Aの失敗要因
M&Aが失敗する要因は大きく2つあります。2-1 デューデリジェンスの不足
M&Aを行う際にはデューデリジェンスを十分に行う必要がありますが、それが不足するといくつかのトラブルにつながります。買収前に隠れていた問題が突如発覚し、買収後に問題が発生する可能性が高くなります。買収後の統合計画も、デューデリジェンスが不十分だと買収対象企業の文化や人材に関する情報が足りず、統合計画を立てる際に誤った判断をしてしまう可能性があります。法的問題に関する情報もしっかりと把握できないと、買収後に法的問題が発生し、M&Aが失敗する可能性があります。M&Aを成功させるためには、十分なデューデリジェンスを実施することが必要です。買収対象企業の経営状況や資産・負債、法的問題などを詳細に調査し、リスクを最小限に抑えることが重要なのです。
2-2 資金調達
M&Aには多額の資金が必要であり、適切な資金調達ができない場合、多くの問題が生じる可能性があります。まず、買収対象企業の株主に対して適切な買収価格を提示できない場合、買収対象企業の株主は買収に反対し、M&Aが頓挫するという可能性があります。また、買収に必要な資金を調達するために借入先から融資を受ける場合がありますが、財務面での不安がある場合、融資条件が不利になることがあります。それにより財務負担が大きくなり、買収後の経営に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、買収後に予想外のコストが発生した場合、資金不足に陥ることがあります。したがって、M&Aにおいては、適切な資金調達が必要です。十分な資金を確保し、買収価格や買収後の経営に必要な資金を適切に見積もることが、M&Aの成功につながる重要な要素の一つです。
M&Aの成功事例
M&Aの成功事例には、以下のようなものがあります。3-1 ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社による株式会社トヨタファシリティーサービスの買収
エレベーターなどの独立系メンテナンス企業であるジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社は、同じくエレベーターやエスカレーターなどの定期点検、故障修理などを行っている株式会社トヨタファシリティーサービスを2021年に買収しました。このM&Aの目的は保守契約台数の増加による事業基盤の強化にあり、加えて人的資源の相互活用を活かすことで、効率的なメンテナンスを可能にしています。3-2 株式会社ダスキンによる株式会社EDISTの買収
飲食関連と生活衛生関連を事業とする株式会社ダスキンは、女性ファッション・美容などのオンラインサービスの運営や企画を手掛ける株式会社EDISTを2021年に買収しました。双方の事業を融合させることで、家庭と仕事の両方を充実させるためのサービスを築き生活衛生関連サービスの事業領域の拡充を実現させました。3-3 小野写真館による旅館「桐のかほり咲楽」の買収
フォトスタジオを中心事業として結婚式場の運営で業績拡大をしてきた小野写真館は、静岡県の伊豆で人気が高い旅館の「桐のかほり咲楽」を2020年に買収しました。旅館にフォトスタジオを併設したほか、旅館全体で貸切挙式を行うなどといった新規事業を新しくスタートし成功しています。
これらの成功事例から、M&Aによって相互に補完的な強みや技術を持つ企業同士が統合し新たな価値を生み出すことができることがわかります。
3-4 影山グループでの事例
影山グループ内でも同じように、M&Aによって企業の強みを活かして付加価値を生み出しています。大洋産業株式会社はSNSを活用したブランディング活動が若手社員の獲得に繋がっており、直近3年間は新卒社員から退職者が出ていません。タカラ産業株式会社はブランディングチームを結成し、企業のブランディングアップと社内の組織活性化を目的として、今までロゴのリニューアルやコーポレートカラーの設定、会社紹介PVの制作などを行ってきました。どちらの会社も、影山鉄工所のブランディングチームがノウハウを提供することで各プロジェクトを円滑に進めることができました。また第一金属工業株式会社は、同じくグループ会社である株式会社クラフトーチと連携することで、電子帳票や自動検査装置を導入して視える化・自動化を加速させています。影山グループに加入することで得られる具体的なシナジーなどにつきましてはM&A専用ページをご覧ください。
M&Aの失敗事例
一方で、M&Aの失敗事例には以下のようなものがあります。4-1 第一三共株式会社によるランバクシー・ラボラトリーズの買収
第一三共は2008年、インド最大のジェネリック医薬品会社であるランバクシー・ラボラトリーズを買収しました。しかし工場での品質管理問題が起きたことによりアメリカのFDAが商品の輸入を停止し、業績が急速に悪化しました。2015年、第一三共はランバクシー・ラボラトリーズをインドの同業大手に売却し、ランバクシー・ラボラトリーズに関する減損処理も発生しました。4-2 株式会社リクシルによるグローエグループの買収
LIXILは、ドイツの水栓器具メーカーであるグローエグループを2016年7月に買収しました。当初はガバナンスの強化などを視野に入れながら事業を進め、欧州市場に本格参入することを目論んでいました。しかし、グローエの中国子会社であるジョウユウにて不正会計が発覚し、LIXILは関係会社投資の減損損失・債務保証関連の損失などで巨額の損失を計上することになりました。4-3 キリンホールディングスによるスキンカリオールの買収
キリンホールディングスは2011年にブラジルのビール大手スキンカリオールを買収しました。 キリンは国内の市場縮小に対して危機感を抱き、新市場での企業成長に期待していました。 しかし、ブラジル市場は不況に見舞われ、ベルギーのビール会社との価格競争に敗北し、2015年にキリンは1100億円ほどの減損損失を計上しました。この事例は、現地での市場調査が不十分であったことにより失敗に繋がったと考えられています。
M&A成功のためのポイントまとめ
M&Aを成功させるためのポイントをまとめると、以下のようになります。- 事前に十分なデューデリジェンスを実施し、リスクを最小限に抑える。
- 相手企業との文化・価値観の違いを認識し、適切な調整を行う。
- 統合後のビジョン・戦略を明確に定め、組織を一体化する。
- 統合後の人材管理に力を入れ、社員のモチベーションを維持する。
影山グループは企業同士の円滑なやり取りができる環境を重要視しており、M&A仲介業者によるマッチングを利用せずM&A専用問い合わせページから直接ご連絡をいただくことでスムーズに契約に関する相談を開始することができます。M&A市場や各業界の動向は常に変化しているものであり、M&Aの契約を進めている最中で環境が大きく変化した場合には、初期段階で見込んでいた目標が達成できない、あるいはM&A自体が中止となる可能性などが生じます。スケジュールを短縮することで外部の影響を受けにくくすることができると影山グループは考えております。
まとめ
以上、M&Aにおける成功・失敗の要因と、実際の成功・失敗事例を紹介させていただきました。M&Aが成功するためには、デューデリジェンスの徹底や資金調達の適切な管理、企業同士の文化適合性や人材管理など、様々な要素に対して知見を広げることが大切です。また、企業同士が円滑にやり取りができる環境が整っていることでM&Aのプロセスをスムーズに進めることができ、取り組むべき課題や将来のビジョンなどを入念に共有することで両社の関係が強化されることが期待できます。
本記事を読んで「将来的にM&Aによる企業売却を考えている」とお考えの方は是非一度、影山グループのM&A専用窓口からお気軽にご連絡ください。