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2023.10.02 溶接topics

世界一の鉄骨建築タワー!東京スカイツリー完成までの苦労と工夫5選!

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皆さんは東京スカイツリーを見たことがありますか?見たことはなくとも、誰もが一度は名前を聞いたことがあるかと思います。店舗や倉庫、工場や高層マンションなどに幅広く取り入れられている鉄骨造ですが、東京スカイツリーも鉄骨造でつくられた超高層建築です。デザインだけでなく、より高い安全性が求められたことから、使用される鋼材や施工方法に新しいデザインが取り入れられています。

今回は、一般的な超高層ビルの鉄骨製作のクオリティーを超えた日本の超高層鉄骨建築物、東京スカイツリーが完成するまでの苦労や技術面での工夫を5つご紹介します。

 

東京スカイツリーは何のために建てられた?

東京スカイツリーは日本が誇る世界一の自立式電波塔です。

高さは「むさしのくに」にちなんだ634m。2011年11月17日にはギネスワールドレコーズ社より世界一高いタワーとして認定されました。

東京スカイツリーの大きな役割は、地上デジタル放送の送信です。年々増加する超高層ビルの影となる部分に電波が届きにくくなるという問題を低減するとともに、携帯機器向けの放送を快適に視聴できるようにするために600m級の新タワーからの送信が望まれました。また、災害時には防災機能のタワーとしての役割も期待されています。

 

東京スカイツリー建築の苦労と工夫5選

画期的な鉄骨構造と精度の高い技術

塔体の構造は「鋼管トラス構造」。その内側はシャフトと心柱で構成されています。

「トラス」とは、三角形を基本単位とした部材で構成された架構です。トラスを構成する部分には軸力(部材の長さ方向に平行に生じる力のこと)のみが発生します。小さな部材の組み合わせで優れた断面性能を発揮し、構造的に安定性が高い特徴があります。

この工事の鉄骨製作の中でも、「分岐継手」は、高い精度が要求され、製作が難しいところです。分岐継手とは、円筒状のパイプ(鋼管)同士を直接溶接する部分です。鋼管同士の接合部は球体のような3次元曲線となります。また、溶接部に鋭角な部分と鈍角な部分が混在します。

1つ1つの部材サイズも非常に大きく、板厚も極厚なため、鉄骨製作に携わった人々に加工や溶接施工に関する非常に高い精度・技術が要求されました。現場での継手が多く発生したり、溶接作業の向きが上向き、横向き、下向きと変わる全姿勢溶接が用いられたり、溶接工の技量が問われました。

 

特殊な工法で 634mへリフトアップ

風の影響が少ない地上付近で、設置場所が500mを超えるアンテナ用鉄塔「ゲイン塔」を組み立てます。溶接と塗装もこの地上付近で行いました。中央部に建てられる円筒部、シャフト内の空洞部分で鉄骨を少しずつ持ち上げ、継ぎ足していき、完成したら500m地点まで一気に吊り上げます。

リフトアップ工法は、世界一の高さの電波塔の安全・品質を確保し、効率良い建設を可能にした立役者といえます。超高層ビル1棟分ほどの大きさの構造物を634mの高さへ引き上げることは前例がなく、工事全体の中で最大の見せ場となる技術です。

 

新装置「スカイジャスター」で空高くまで吊り上げる

これまで日本には300mを超えるビルは存在しませんでした。そのため、現行の仕様の機種では、300m分を吊り上げるワイヤーしか装備していませんでした。そこで、特別仕様のタワークレーンを使用しました。巻上ワイヤーの巻上装置を特別仕様とし、420m分の吊り上げワイヤーにチューンアップ。暴風や地震など、未知の環境でのタワークレーンの安全対策を検討し、11項目の特別仕様を搭載しました。中でも、作業効率アップや安全確保のために活躍しているのが、物体を回転させると回転が高速なほど姿勢が安定する「スカイジャスター」です。風などの影響で吊り荷が回転するのを防ぐとともに、取り込み箇所で介錯(かいしゃく)ロープを使用せず任意の方向へ吊り荷を回転させることができます。タワークレーンで揚重を行う際には、風の影響やクレーンの慣性力により、吊荷が空中で回転してしまうことがあります。しかしながら、スカイジャスターは風の影響やクレーンの動きに伴う慣性力で回転している吊荷を止めることができます。

 

耐震性を高める「心柱制振」

東京スカイツリーは、地震や強風時の揺れに対応するため、3種類の制振システムを採用しています。

そのうちの1つは「心柱制振」です。

中央部に設けた鉄筋コンクリート造の円筒(=心柱)と外周部の鉄骨造の塔体を構造的に分離し、中央部の心柱上部を「重り」として機能させた新しい制振システムです。原理としては、地震時に構造物本体とタイミングがずれて振動する付加質量を加え、本体と錘の揺れを相殺させる「質量付加機構」という現代の制振技術を応用しています。心柱制振は、大地震時には構造物全体の揺れを抑制することができます。日本の伝統的な塔である「五重塔」はこれまでに地震による倒壊例がありません。その秘密は同じく建物中央の柱=心柱にあると推察されています。そこで、今回の制振システムを五重塔になぞらえて、「心柱制振」と呼んでいます。

 

東京スカイツリー建設のために開発された「新しい鋼材」

鋼材約34,000トンを使用している東京スカイツリー。その大部分は、丈夫な「高強度鋼管」を使用しています。

塔体最下部には、最大サイズで設計基準強度(耐力)が500MPaの新開発極厚鋼管を採用。ゲイン塔部には、国内の建築構造物では初めての耐力630~700MPa級超高強度鋼間が採用されました。これらは標準的な鉄骨(JIS規格鋼管325MPa)よりも約2倍強く、国土交通大臣の認定を取得しています。トラックの高さは「3.8メートル以下」と道路交通法で定められているため、巨大な鋼材のほとんどが「低床トレーラ」を使用し運搬を行いました。

 

まとめ

いかがでしたか?実は東京スカイツリーには、今までに例のないサイズの鋼材、高品質で精巧な鉄骨製作、溶接技術が数多く用いられているのです。また、約25,000本の鉄骨が使用された魅力が溢れる東京スカイツリーは、技術者も注目するほどの建築物なのです。機会があれば是非、この記事を参考に職人さんたちの熱い想いも伝わってくるような東京スカイツリーへ足を運んでみてはいかがでしょうか?

株式会社影山鉄工所は昭和22 年設立以来、70 年以上この道一筋を歩んできました。 世界に誇れる溶接技術を駆使し、今後も鉄骨工事一式の事業に携わっていきます。

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