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レーザー溶接とは?原理・メリット・デメリットを解説 

2020.07.06溶接topics

レーザー溶接とは?

溶接工として働く場合、アーク溶接やスポット溶接以外にも身につけたい方法がレーザー溶接です。この記事ではレーザー溶接の原理や代表的な種類のほか、メリット・デメリットについても解説します。自動車のマフラーを溶接したい人や疲労強度が気になる人も参考にしてください。 

 

レーザー溶接とは? 

金属を接合する「溶接」の中でも、レーザーを利用する方法のことを「レーザー溶接」といいます。レーザーとは「Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation」のこと。訳すと「誘導放出によって増幅された光」およびその装置のことになります。 

通常の光とは異なるレーザーを使うため、小さく細かい鋼材やステンレス鋼の溶接も可能です。ステンレス鋼は一般的な炭素鋼より熱で歪みやすく溶接の難易度が高いものの、レーザー溶接は一般的なアーク溶接より低入熱なので、ステンレス鋼の変形を抑えることができます。 

 

レーザー溶接が用いられているのは医療・美容・情報通信・自動車・造船・航空宇宙・エネルギー・産業機械など、精密機器を中心としたさまざまな分野です。 

 

レーザー溶接の原理 

「誘導放出によって増幅された光」というレーザーの仕組みを紐解くことによって、レーザー溶接の原理を理解することができます。 そのキーワードとなるのが「誘導放出」です。

「誘導放出」とは、エネルギーが高い励起(れいき)状態の「電子」に「電磁波」(光子)を加えると、「電子」のエネルギーが低くなり、その分「電磁波」(光子)のエネルギーが高まって放出される現象のことです。

わかりやすく表すと次のとおりになります。 

  • 「電子↑」+「光」=「電子↓」+「光↑」

 

ちなみに「電子」とは負電荷(-)をもつ粒子のこと。物質を構成する「原子」の要素のひとつで、流れると「電流」になります。 

  • 原子=原子核+電子(-) 
  • 原子核:陽子(+)+中性子(±) 

 

「電磁波」とは電界(物質の電荷に影響を及ぼす空間)と磁界(磁力が働く空間)を伝わる波動のことで、「光」やテレビ・ラジオなどの「電波」は電磁波の一種です。また「光子」とは光の粒子のこと。  

つまりレーザー溶接は、「エネルギーが高い電子」と「通常の光」の融合によって放出される「エネルギーが高まった光」=「レーザー」の熱を利用する仕組みです。 

溶接は大まかに「融接(ゆうせつ)・圧接・ろう接」という3つの方法に分類できますが、レーザー溶接は熱を加えることで固体を液体に変化させる「溶融」(ようゆう)による「融接」の一種になります。「入熱→溶融→凝固→冷却」という過程を経て、鋼材が接合される原理です。 

 

レーザー溶接の中にもさまざまな方法がありますが、大まかには「レーザー発振器」という装置によってレーザーを発生させ、「光路」を通って「集光光学系」(固定工学系)にレーザーを集めて鋼材に照射します。 

「シールドガス」(アシストガス)によって接合部の酸化や窒化を防いだり、「駆動系」で鋼材を動かしたりしながら行います。 

 

レーザー溶接の種類と方法 

通常の光よりも強く純度が高いレーザーを使うことによって、さまざまな分野で活躍しているレーザー溶接。その代表的な種類と方法を5つ紹介します。 

 

CO2レーザー溶接 

レーザー溶接の中でも一般的で長い歴史をもつ種類が「CO2レーザー溶接」(炭酸ガスレーザー溶接)です。1916年にアインシュタイン博士が「誘導放出」の理念について発表し、約50年後の1964年にアメリカのベル研究所で発明されました。 

通常の光を増幅する「レーザー媒質」となるのは低出力の場合CO2(二酸化炭素・炭酸ガス)、高出力の場合CO2-N2-He(二酸化炭素+窒素+ヘリウム)の混合ガスです。 

こうした媒質を放電して励起する「誘導放出」によって、波長10.6μmの遠赤外レーザーを連続発振(CW)、または断続的にパルス発振(P)します。 

 

CO2レーザーの最大出力は45kW、連続発振の平均出力は500W~15kWと高出力化しやすく、10~20%と発振効率が良いところもメリットです。発生させたレーザーを集める「集光光学系」ではミラーとレンズが使われ、遠距離に光エネルギーを伝える「ファイバー伝送」はできません。 

 

YAGレーザー溶接 

レーザー媒質がガス(気体)という「ガスレーザー溶接」の中でも代表的な種類が「CO2レーザー溶接」であるのに対して、固体を媒質とする「固体レーザー溶接」の代表的な種類が「YAGレーザー溶接」になります。「CO2レーザー溶接」と同じく、1964年にアメリカのベル研究所で発明されました。 

YAGとは「Yttrium Aluminum Garnet」(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)というガーネット構造の人口結晶のことです。イットリウム(レアアースの一種)とアルミニウムの複合酸化物に、Nd(ネオジム)やEr(エルビウム)などのレアアース(希土類元素)をドープ(添加)したものが媒質として使用されます。 

 

波長1.064μmの近赤外レーザーを、連続発振・ノーマルパルス発振・Qスイッチパルス発振(短時間・高出力)できるという「発振形態」の多様性や、ミラーとレンズだけでなく「ファイバー伝送」が可能なところ、複数を同時にレーザー照射する「分岐仕様」ができる点もメリットです。 

 

③半導体レーザー溶接 

固体のレーザー媒質の中でも半導体を用いる場合は「半導体レーザー溶接」あるいはレーザーダイオード(LD)溶接・ダイオードレーザー溶接といい、おもに下記の半導体が使われます。 

  • AlGaAs(3元混晶:アルミニウム・ガリウム・ヒ素) 
  • InGaAs(3元混晶:インジウム・ガリウム・ヒ素) 
  • InGaAsP(4元混晶:インジウム・ガリウム・ヒ素・リン) 

0.8~0.98μmの近赤外レーザーを連続発振し、「ファイバー伝送」も可能、30~60%と発振効率が非常に良く、エネルギー密度が高い楕円ビームを照射できる点がメリットです。 

 

「YAGレーザー溶接」の場合は媒質を励起する光源としてランプを使う「ランプ励起」であるのに対し、「半導体レーザー溶接」は半導体に電流を流す「LD励起」となるため、装置は小型で軽量。消耗品のランプを交換する必要もないので比較的低価格になっています。 

 

④ディスクレーザー溶接 

「ディスクレーザー溶接」はレアアースのNd(ネオジム)またはYb(イッテルビウム)を添加したYAG(固体)を媒質としますが、「YAGレーザー溶接」の媒質は円柱状、「ディスクレーザー溶接」の媒質は薄い円盤状という違いがあります。 

 

1.05μmの近赤外レーザーを連続発振・パルス発振し、連続発振の場合は最大出力12kW・平均出力8kW、パルス発振の場合は最大出力6kW・平均出力100W~4Kwと高出力、高輝度で「ファイバー伝送」でき、10~20%の高発振効率がメリットです。 

 

⑤ファイバーレーザー溶接 

SiO2(シリカ・二酸化ケイ素・無水ケイ酸)にレアアースのYb(イッテルビウム)を添加したシリカファイバーなどを媒質に使う「ファイバーレーザー溶接」。1.05~1.09μmの近赤外レーザーを連続発振し、最大出力30kW・平均出力100W~10Kwと高出力、「ファイバー伝送」も可能で高輝度、20~30%の高発振効率です。 

 

さらに低パワー装置の場合は極細ビームを照射でき、消耗品がないのでメンテナンス不要といったメリットもあり、「ディスクレーザー溶接」と併せて2000年以降に普及した新たなレーザー溶接として注目を集めています。 

 

レーザー溶接が使われるもの 

自動車・造船・鉄道・医療などさまざまな分野で活躍しているレーザー溶接を使って下記のような製品が生産されています。

  • 自動車(マフラー)
  • 船舶(高張力鋼板)
  • 鉄道車両
  • 医療機器
  • 食品機器
  • パチンコ部品
  • 工作機械部品
  • 精密機械(時計・携帯電話・パソコン)
  • アクセサリー(ジュエリー)
  • 電気機器
  • 食品機器
  • 航空機
  • ロケット
  • 人工衛星
  • 宇宙探査機
  • 太陽光発電(太陽電池)
  • 火力・水力・原子力発電
  • 石油化学(プラント)
  • 理化学機器(プラント)
  • 建設機械
  • 建物(螺旋階段・門扉)

などで使われています。 

 

レーザー溶接のメリット 

アーク溶接は電気、ガス溶接はガスを使って鋼材を溶かしますが、レーザー溶接の過熱方法はレーザーです。電気やガスと違ってレーザーは照射する際に散乱せず平行性を保つので、エネルギーとパワーの密度が高いというメリットがあります。 

そのため硬い鋼材・融点(個体が液体になる温度)が高い鋼材・無機物を焼き固めたセラミックス・プラスチック・異種材料の溶接も可能です。 

さらにレーザー溶接は微細なものから巨大なものまで形にこだわらず、高品質・高精度・高速度で仕上げることができます。NC(数値制御)やCAD/CAM(コンピュータ支援設計・製造)を利用して自動化・精密制御することも可能です。 

非接触溶接なので装置の消耗や汚れがなく、メンテナンスが不要というメリットもあります。 

 

レーザー溶接のデメリット 

CO2レーザー溶接とYAGレーザー溶接では反射率が高く、レーザーが吸収されにくいというデメリットがあるので、パワーを高める必要があります。全般的にレーザーの焦点深度が浅いため、高輝度・高パワーレーザーを使って焦点がずれないようにするべきです。 

また、ギャップ裕度が低いため、レーザーの照射位置がずれると疲労強度が低下しやすいという問題もありますが、アーク溶接とのハイブリッドなどでカバーできます。 

 

まとめ 

レーザー溶接の原理や代表的な5つの種類と方法、使用されるものメリット・デメリットについて解説しました。励起した電子の誘導放出によって光が増幅され、結果的に高エネルギー・高純度の光となったレーザーを利用して「入熱→溶融→凝固→冷却」、鋼材が接合するという原理です。 

自動車のマフラーや精密機器をはじめとして造船・医療・航空宇宙・エネルギーなど幅広い分野で使用されているレーザー溶接。代表的な種類としてはCO2レーザー溶接・YAGレーザー溶接・半導体レーザー溶接・ディスクレーザー溶接・ファイバーレーザー溶接が挙げられますが、いずれも「レーザー発振器」という装置を使います。 

 

高エネルギー密度・高パワー密度というメリットにより品質・精度・速度に優れていて、自動化や精密制御にも対応可能です。基本的にメンテナンスをする必要がないなど利点が多いものの、レーザー照射にずれが生じると鋼材の疲労強度が低くなる恐れがあるため注意が必要になります。溶接工として働く場合はこうしたレーザー溶接の仕組みをしっかり把握しておきましょう。 

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