目次
本記事では、溶接記号の基礎知識や書き方、種類や一覧をcad図面で解説します。溶接は、鋼部材の接合方法の1つで、現代では主流となる接合方法です。溶接記号の基礎知識を覚えて、実技だけではなく設計のスキルも深めていきましょう。
溶接記号とは?
建築物の図面を見ているときに、見たことがない記号が出てくることがあります。
それは、溶接の方法について、設計者が指示をだしている溶接記号です。
建設業に限らず製造業や、その他モノづくりに関わる仕事には、必ず設計図が存在します。
「どのような機能を持たせるか?」「構造上問題ないか?」など要件定義(仕様)をし、その要件定義通りに設計者が図面に起こします。
今回解説する溶接記号は、その図面に記載される溶接を指示する為の記号です。
溶接工であれば、誰が見ても分かるように統一された記号です。
熟練者であればほぼ覚えているでしょうが、基本的には調べながら作業を行います。
こちらでは、溶接の種類と溶接記号について簡単に解説します。
溶接とは
溶接記号の解説の前に、まずは簡単に溶接について解説します。
溶接とは、2個以上の部材の接合部に「熱」、「圧力」又は「熱と圧力の両方」を加えて、さらに必要があれば溶加材を加えて、一体化された1つの部材とする接合方法です。
溶接には、大きく分けて以下7種類があります。
- アーク溶接
- ティグ(TIG)溶接
- マグ(MAG)溶接
- ミグ(MIG)溶接
- 被覆アーク溶接
- プラズマ溶接
- エレクトロガスアーク(EGW)溶接
また、溶接方法の中には以下5種類があります。
- ミグ溶接
- 半自動の溶接
- 上向きの溶接
- 直角の溶接
- 溶接の仮付き
溶接記号とは
溶接記号とは溶接指示箇所に対して図で表す場合に使われる記号を指し、JIS B3021に従って定められている記号です。
記号は矢、基線、溶接部記号で構成されています。(図1)
図1:溶接の基本記号
矢基線尾
基本は水平にし、矢は基線に対して60°くらいの直線にします。
尾は、特殊な指示がある場合には付けても良いですが通常はつけません。
中には、矢を2本以上付けるケースもあります。ただ、注意点として基線の両端に矢をつけることはできません。
溶接をする必要がある製品や、建物の設計図面には、溶接記号が書かれています。
設計図面は、溶接するための指示が書かれているものですが、現場で急遽溶接が必要になるケースもあります。
その際にも溶接記号を追加で記入する場合があります。
溶接記号の意味
溶接記号には、基本記号、組み合わせ記号、補助記号という3つの種類があります。
溶接部記号がついていない時は、方法や形状は問わず溶接で接合することを意味しています。
また、溶接記号と一緒に溶接部の寸法などもまとめて記載することができます。
その場合の数値は、記載する位置によって意味が変わるので気を付けましょう。
必要なものだけ記入して、必要がない場合は何も記入しなくても問題はありません。
溶接記号の種類
ここでは、溶接記号の種類をいくつか紹介していきます。
基本記号から対称的な溶接部の組合せ記号まで、幅広く1つ1つずつ解説していきます。分かりやすく1つの記号に対し図面も載せていますのでご参考ください。
種類はたくさん何十通りもあるため、覚えることは大変ですが、意味を理解しながら勉強すると覚える事が可能なため、しっかり学習してください。
開先
・I型、V型、U型開先
開先とは、溶接作業をする際に、結合部分に溶接部材と母体が接合しやすいように設ける溝の事です。母材のサイズが大きすぎて材料が用意できず、平板などをつなぎ合わせる場合によく使われることが多いです。
・レ型、J型開先
レ型、J型開先は、L字やT字などのコーナー部分の溶接で主に使われることが多い記号です。
・K型開先
レ型開先を両面から行い溶接する方法です。
・X型開先
V型開先を両面から行い溶接する方法です。
・H型開先
U型開先を両面から行い溶接する方法です。
・両面J型開先
J型開先を両面から行い溶接する方法です。
フレア溶接
・V型フレア溶接
フレア溶接とは、部材同士を重ね合わせて溶接をする方法です。板曲げなどによって、Ⅼ字形状をしている部品同士をつなぎ合わせる場合に使用されます。感覚的には、ルート間隔が0の開先溶接と似ています。
・レ型フレア溶接
Ⅼ字形状の平板の面と、部品とをつなぎ合わせる場合に使用されることが多い記号です。
・X型フレア溶接
2つの丸棒などの母材に、V型フレアを両側から行い溶接する方法になります。
・K型フレア溶接
丸棒と板材などの母材に、レ型フレアを両側から行い溶接する方法になります。
その他
・へり溶接
へり溶接とは、2つ以上の母材を平行に重ねた状態で、母材の端面を溶接する際に使われる記号です。
・すみ肉溶接
主にリブやブラケットなど、材料同士を直角に溶接する場合に使用していきます。開先よりも強度が低くなるので、すみ肉溶接で強度が必要な場合には、反比側のコーナー部分も溶接することで強度を増すことができます。
・プラグ・スロット溶接
2つの母材の一方に穴(プラグ)をあけておき、その穴(プラグ)を埋めるようにして接合する溶接です。スロット溶接は溝を、プラグ溶接は丸穴を意味しています。
・スカーフ綱手
継手(つぎて)とは、大型の構造物を建築する場合I型開先の母材を斜めに加工されていて、溶接面を広くとることで強度を上げる綱手方法です。
・キーホール溶接
主にプラズマアーク溶接で、2枚の母材を重ねて1枚を溶解して貫通させて再凝固させる時に使う溶接方法です。
溶接記号の書き方
こちらでは、溶接記号の書き方を説明して紹介していきます。
主に溶接を用いた製品・構造物の設計図面には、溶接記号が書かれています。
溶接記号は、規格化された記号で、溶接記号を見れば溶接の種類・開先形状と寸法・溶接表面形状と仕上げ方法などの指示や工事溶接または現場溶接の区別などが見ただけで分かるようにしています。
溶接指示の書き方のポイントは、
- 溶接長さ寸法も説明線に記載する
- 溶接する側が⇒の反対側の時は基本記号は基線の上に書くようにする
- 基本記号は基線に接して太い実践で描く
と大きく3つあります。
図面記号が表記してあるだけで設計者と現場でのやりとりがスムーズにでき、必要事項がしっかり明記されていれば、図面通りの製品を製造することが可能になります。
一方で、図面が汚く書かれて分かりづらかったり、必要な記号が記載されてないと、図面通りの製品が作れず、現場と設計部門でのやりとりも増えてごちゃごちゃになってしまいます。
それを防ぐために、正しくキレイに溶接の記号を書くことが重要となります。
また、図面はCADというソフトで書きます。CAD(Computer Aided Design)は建設業だけでなく、服飾や車の設計にも使用するソフトウェアです
CADが普及する以前はすべて手書きで書いていた図面を、CADを使用してコンピュータで書けるようになりました。
CADで図面を書くことの利点は以下3点です。
- 手書きで図面を書くよりも比較的簡単に書くことが可能
- 手書きで図面修正するよりも比較的簡単に修正が可能
- データの保存が容易でバックアップも取れる
図面を手書きで書く場合は、製図用の道具(特殊な定規やコンパスなど)を使用して書く必要があるため、人によって完成図がバラバラで職人のような存在でした。
CADで書くと溶接記号もCADの中に登録されていますので、誰が書いても均一に描くことが可能です。
また、同じ理由で修正も簡単です。
手書きで描いていると消しゴムなどで消してから修正する必要があり、手間がかかっていました。
CADではこちらもマウスとキーボード操作で実施することが可能です。
データの保存・バックアップについても同じで、手書きであれば紙で保存する必要があり場所もかなり取っていました(PDFに取って保存するというやり方もありますが)。
CADに切り替わってからはデータを簡単に保存する事ができ、昨今ではバックアップをクラウド上のサーバーに置いておくことで現場でも最新の図面を見る事が可能になりました。
溶接記号の一覧
溶接記号の一覧をcad図面でご紹介していきます。
溶接記号は、上記で種類をお伝えしましたが、ここでは溶接記号を図面で表したものをします。記号は多いですが頑張って覚えるようにしましょう。
溶接記号の意味や書き方のまとめ
本記事では、溶接記号の基本や、種類、意味などをご紹介しました。
溶接記号があるとないとでは大きく違い、溶接作業でもクオリティーが変わるくらいとても大事で必要不可欠な存在です。
また、溶接記号は、基線及び矢並びに追加の情報を加える付加要素にもなります。
正確に丁寧に記載することで、溶接にもトラブルなく、円滑に事を運ぶことができる大事な役割があります。
何事もなくスムーズに作業できるようにしていきたいですね。
溶接の種類はたくさんあって丸暗記するのは時間もかなりかかります。
それに、構造設計のプロでも全ての溶接記号を把握しているわけではありません。
1番大事なのは基本的なことを理解していれば問題はありません。
本記事だけでも、記号の意味、溶接記号と書き方のポイントをしっかり覚えていけば十分活用できます。時間が経てば復習するのもいいでしょう。
【溶接の種類】
- アーク溶接
- ティグ(TIG)溶接
- マグ(MAG)溶接
- ミグ(MIG)溶接
- 被覆アーク溶接
- プラズマ溶接
- エレクトロガスアーク(EGW)溶接
【溶接方法】
- ミグ溶接
- 半自動の溶接
- 上向きの溶接
- 直角の溶接
- 溶接の仮付き
【溶接記号とは】
・溶接指示箇所に対して図で表す場合に使われる記号
- 基本記号
- 組み合わせ記号
- 補助記号
【溶接記号の書き方のポイント】
- 溶接長さ寸法も説明線に記載する
- 溶接する側が⇒の反対側の時は基本記号は基線の上に書くようにする
- 基本記号は基線に接して太い実践で描く
【CADで図面を書くことの利点】
- 手書きで図面を書くよりも比較的簡単に書くことが可能
- 手書きで図面修正するよりも比較的簡単に修正が可能
- データの保存が容易でバックアップも取れる