目次
ビルを建てたり、橋をかけたりする大きな工事から、椅子や机の結合部分など、鉄をつなぎとめるために溶接という技術が頻繁に使われています。
本記事では、その溶接に携わる溶接工の仕事、資格、年収について解説します。
溶接工とは?
溶接工とは、金属材料の接合方法のひとつである溶接を行う技能者のことを指します。溶接の仕事をしている人が溶接工と呼ばれ種類や場所は問いません。
ただ、多くの溶接工の職場は、造船・自動車・重電機・一般機械などの製造業を主な職場としています。
その他の業種に関しては、建設業で橋、ダムのような鉄骨構造物を建設する際にも溶接工が活躍しています。
溶接工は、一般に重量物を製作しかがみ作業、立ち作業などもあるため、強靭な身体と耐久力が必要となっています。
溶接工になるには資格が必要
必要溶接工の仕事は、火や電気・ガスや圧力を取り扱うため危険が生じます。
溶接工の仕事は専門知識と高い技術力とがなければ、火傷や視力低下などの大怪我につながるような事故を引き起こしてしまいます。
上記のように安全性の面からも溶接工としてすぐに誰でも働ける訳ではなく、資格を取得している必要があります。
ここでは溶接工として働くための資格を紹介します。
溶接技能者
溶接技能者は、鋼構造物の製作における溶接作業に従事する技能者の資格のことで、JIS、WESなどの一定の国内規格に基づいて溶接作業の技量の評価試験を行い資格の取得を行います。
溶接技能者資格の代表的なものを以下で紹介します。
- ガス溶接技能者
- アーク溶接作業者
- ステンレス鋼溶接
- チタン溶接
- プラスチック溶接
- 銀ろう付
- すみ肉溶接
- 基礎杭溶接
- 石油工業溶接
上記以外にも、多くの溶接技能者資格がありますので一例となります。
これらの資格取得するための条件に関してはそれぞれ異なるため、取得したい場合は日本溶接協会のホームページをご確認ください。
溶接管理技術者
溶接管理技術者は、ISO、WESに基づいて、日本溶接協会が設置した資格で溶接施工と関連する作業や工程の計画や管理を行うことができます。
溶接管理技術者は責務や知識及び職務能力によって、特別級・1級・2級に分かれていて、各級の業務内容に関しては以下のようになり、各級によって行う業務は変わってきます。
- 特別級:全般的業務
- 1級:溶接一般の施工計画と技術管理、施工基準の決定など
- 2級:溶接、関連作業の監督指導、現場管理、施工記録書の作成など
溶接工になるならどの資格から取るべき
前項でご紹介の通り溶接工に関する資格は非常に多くあるため、一体どの資格から取得したらいいのか判断できないと思われます。
そんな時、溶接の仕事を始めたいがどの資格を取得して良いか迷うような場合はまず「アーク溶接作業者」の資格取得がおすすめです。
ここでは「アーク溶接作業者」について解説します。
アーク溶接作業者
アーク溶接作業者とは、労働安全衛生法に基づくアーク溶接特別教育の講習を修了した後、修了証の交付を受けた溶接作業者のことを指します。
アーク溶接作業者は溶接棒(金属電極)と被溶接物の間にアーク(火花)とを発生させて、その熱を利用して溶接する「アーク溶接」を行うために必要な資格となり、生産工場や建設現場などにおいてさまざまな範囲で使用されています。
アーク溶接作業者の資格を取得すると当たり前ではありますが、アーク溶接業務を行うことができます。
その種類には、被覆アーク溶接、ガス・シールドアーク溶接、半自動アーク溶接、自動溶接が含まれます。
実際にアーク溶接作業者の資格を取得したい場合は、技能講習を受講する必要があり、技能講習は学科と実技で構成され、学科講習は2日間で11時間、実技講習は1日間で10時間あります。
合計3日間で21時間の講習時間を修了することにより取得できます。
アーク溶接作業者の合格率は公開されていませんが、ほとんどの方が合格されるようです。もし実技試験で落ちてしまった場合も、学科の合格は1年間有効となりますので、難易度はそこまで高くない、と言えるでしょう。
学科試験の内容に関してですが、溶接の一般知識から始まり、溶接機の構造と操作を学んでいきます。
次に、鉄鋼材料及び溶接材料等の材料に関する知識や、溶接の施工・試験・検査を学びます。
また、溶接作業時の安全衛生管理なども併せて学んでいきますので、実用性がある試験でもあります。
溶接工の年収は?
平成27年度厚生労働省の賃金構造基本統計調査調べによると、溶接工の月収は29万1100円で、年間に4ヶ月のボーナスがあるとすると29万1100円×16ヶ月=465.76万円となります。
溶接工の年収に関しては、勤務する企業の規模などによっても変わってきますが、新卒の初任給は20~25万円で、初年度の年収は約300万円程度と言われています。
それ以降は年齢と共に経験を積んでいき、40歳代で440~500万円程度が一般的な年収と言われています。
以下に職種・役職別年収を紹介します。
- 見習い溶接工:年収300万円~
- 独立親方クラスの溶接工:750万円~1,000万円以上
- ベテラン溶接工:年収650万円~800万円
この年収に関してはあくまで平均的な年収の例えとなるため、造船所など水中での溶接作業や、高層ビルなど高所での溶接作業を行う人の年収は、これらの平均年収よりもかなり高くなります。
溶接工の年齢別の年収と給与ボーナス予想推移
齢年別に月額給与・ボーナスを厚労省の統計を参照してみると、溶接工での働き盛りである30歳代の年収は約414.74万円となっており、最大年収になる50歳代での年収は559.2万円となる事等が表から見えてきます。
下記、全体の年齢別年収推移表となります。
年齢 |
年収 |
月額給与 |
ボーナス |
20~24歳 |
265.6万円 |
16.6万円 |
66.4万円 |
25~29歳 |
280.9万円~330.9万円 |
20.7万円 |
82.7万円 |
30~34歳 |
263.5万円~363.5万円 |
22.7万円 |
90.9万円 |
35~39歳 |
310.7万円~414.7万円 |
25.9万円 |
103.7万円 |
40~44歳 |
345.0万円~466.0万円 |
29.1万円 |
116.5万円 |
45~49歳 |
399.9万円~521.9万円 |
32.6万円 |
130.5万円 |
50~54歳 |
449.2万円~559.2万円 |
35.0万円 |
139.8万円 |
55~59歳 |
444.5万円~554.5万円 |
34.7万円 |
138.6万円 |
60~65歳 |
277.5万円~554.5万円 |
23.6万円 |
94.4万円 |
溶接工の都道府県別平均年収
厚労省が出した都道府県の平均給与比率から、各都道府県の溶接工の平均年収を算出しました。
おおよその業界に通じる事ですが、日本の主要都市がある都道府県では、
溶接工の給与ももれなく高くなるようです。
その他若干ではありますが、モノづくりが盛んな地域が高くなっているようにも思われます。
都道府県 |
平均年収 |
北海道 |
419.4万円 |
青森 |
372.8万円 |
岩手 |
419.4万円 |
宮城 |
466.0万円 |
秋田 |
372.8万円 |
山形 |
419.4万円 |
福島 |
419.4万円 |
茨城 |
466.0万円 |
栃木 |
466.0万円 |
群馬 |
466.0万円 |
埼玉 |
419.4万円 |
千葉 |
466.0万円 |
東京 |
652.4万円 |
神奈川 |
512.6万円 |
新潟 |
419.4万円 |
富山 |
419.4万円 |
石川 |
466.0万円 |
福井 |
466.0万円 |
山梨 |
419.4万円 |
長野 |
466.0万円 |
岐阜 |
419.4万円 |
静岡 |
466.0万円 |
愛知 |
512.6万円 |
三重 |
466.0万円 |
滋賀 |
466.0万円 |
京都 |
466.0万円 |
大阪 |
559.2万円 |
兵庫 |
466.0万円 |
奈良 |
466.0万円 |
和歌山 |
419.4万円 |
鳥取 |
419.4万円 |
島根 |
419.4万円 |
岡山 |
466.0万円 |
広島 |
466.0万円 |
山口 |
466.0万円 |
徳島 |
466.0万円 |
香川 |
419.4万円 |
愛媛 |
419.4万円 |
高知 |
419.4万円 |
福岡 |
466.0万円 |
佐賀 |
372.8万円 |
長崎 |
419.4万円 |
熊本 |
419.4万円 |
大分 |
419.4万円 |
宮崎 |
372.8万円 |
鹿児島 |
419.4万円 |
沖縄 |
372.8万円 |
溶接工が合う・向いている人は?
溶接工の仕事が向いている人のタイプ例をあげてみます。
必ずしも合うという情報ではありませんがご参考に。
体力に自信がある人
溶接工の仕事が自身に合う・向いていると思えるポイントの一つは、体力に自信があるかどうかです。
溶接工は肉体労働でハードな仕事をする職業となっています。そのため、日頃から体を動かすことが好きな方や、体力に自信のある方はとても溶接工に向いていると言えます。
溶接を行う途中の過程では、金属の板を切断する作業やクレーンを用いて数トンの鉄部材を移動させる等、体を動かす割合が多い仕事内容となっています。
また、仕事内容は立ち作業が多く、時にはトラックの運転や塗装作業などが発生することもあります。
そのような仕事内容であるため、身体を動かすことが好きで体力には自信があるという人のほうが向いています。
反面、作業に関しては集中しものづくりを行うため、目を駆使しながら長時間に渡って細かい作業をすることもあります。
慎重な性格の人
溶接工の仕事が自身に合う・向いていると思えるポイントの二つ目に、慎重な性格である事があげられます。
溶接工の仕事内容は、溶接を行う際に火や電気や圧力、ガスなどを取り扱うため非常に危険性が高く、一歩間違えれば重大な災害を起こしてしまうこともあります。
また、溶接したものが建築部材などであった場合、その結果に対し大きな責任が発生します。
このように溶接工の仕事を行っていくなかで重要な役割は、全ての作業において危険を予測することと、その成果の結果をよく考える事が重要になります。
「いつも出来ているから、これくらいは大丈夫だろう」と考えてしまうような大雑把な性格の人や楽観主義の人よりも、「もしかしたら今日、最悪の事態が起こるかもしれない」と予測し、常に気を引き締めて慎重に作業ができるような人は、作業のスピードや体力以上に溶接工の仕事の重要な要素を持ち合わせていると言えるでしょう。
高い集中力を持っている人
溶接工の仕事が自身に合う・向いていると思えるポイントの三つ目は、高い集中力を持っている人です。
上記でも述べたように、溶接工の仕事は非常に危険が伴う作業を行う職種となっています。
作成物に対しての責任も発生するため、溶接工の仕事が合う・向いていると思える要素は「慎重な性格の人」だけではなく、高い集中力を持っている事も重要な要素になります。
溶接工の仕事は、長時間の間、同じ姿勢で作業を行う必要性があります。
同じ姿勢を長時間行うと疲労から徐々に集中力が切れてしまい、どうしても集中力散漫状態になってしまう事はあります。
常に慎重に仕事を行う人でも、集中力が切れてしまうと危険性が高くなってしまいますので、高い集中力を保つことができる人は溶接工の仕事に向いているといえます。
ものづくりが好きな人
溶接工の仕事が自身に合う・向いていると思えるポイントの四つ目は、ものづくりが好きな人です。
溶接工の仕事は、材料と材料を繋ぎ合わせて新しいものを作り、最終的には製品となって消費者のもとに届けられるため、ものづくりをすることが好きで、ものづくりを通して誰かの役に立ちたいという人にとっても最適な仕事となります。
また、自分の手でものづくりができるというやりがいを仕事を通して感じることもできます。
さらに溶接工の仕事の中には、小さなものから複雑な形状のものを溶接することもあるため、細かい作業が好きな人や手先が器用な方も向いています。
技術大国である日本は、溶接技術において高度な技術を持っている溶接工の人も多く存在しており、場合によっては伝統的な職人技を身に着けることができる可能性がある職種となっています。
これらの事から溶接工はものづくりに携わる専門職として活躍したいという人にはとても魅力的な職業となっています。
上記が向いていると思われる傾向です。
簡単に平たく言えば、「一つの物事に没頭するタイプ」の人は比較的溶接工に向いていると思います。
溶接工のキャリアプラン
溶接工のキャリアプランとして、自分自身の技術を向上させ実績を重ねていくキャリアプランが一つ。
もう一つは、他業界と同様、資格を取得していく事でキャリアを積んでいくプランももちろん溶接業界にもあります。
溶接工の資格については前項で紹介しているためこちらではさらに詳しく解説していきます。
アーク溶接特別教育
プロのアーク溶接工として働く上で必要な資格となっており、この資格を取得する事により以下の3つの作業が可能となります。
- 手アーク溶接(被覆アーク溶接、ガスシールドアーク溶接など)
- 半自動アーク溶接
- 自動溶接
アーク溶接特別教育の受講資格は、満18歳以上となっており、学科が11時間、実技が10時間必要となります。
ガス溶接作業者
アーク溶接特別教育と並び、最重要資格の1つとなっており、プロとしてガス溶接を行う際、必要となる資格となっています、ガス溶接作業者の資格を取得すると以下の2つの作業が可能となります。
- 可燃性ガス、酸素混合ガスを用いる溶接
- 切断等のガス溶接の作業
ガス溶接作業者の受講資格は、満18歳以上となっており、学科が8時間、実技が5時間必要となります。
JIS溶接技能者(TN-F)
薄板ステンレスにおける基本級の資格となっています。
IS溶接技能者(TN-F)を取得することにより何かができるというわけではなく、資格がスキルの証明になります。
- 一定の国内規格(JIS、WESなど)に基づいて溶接作業の技量についての評価試験。
- 発注者からの溶接施工等に関する仕様書などで、要求される溶接品質を確保するために、製作者が信頼性を証明する手段の 1つ。
JIS溶接技能者(TN-F)の受講資格は15歳以上となっており、溶接経験が1ヵ月以上必要となります。
JIS溶接技能者(N-2F)
鋼構造物の製作における溶接作業に従事する溶接技能者についての資格で、溶接作業を行う技能者の技量を一定の基準(JIS、WESなど)に基づいて評価試験を行います。
JIS溶接技能者(N-2F)の受講資格は15歳以上となっており、基本給(下向き)の場合1ヶ月以上、専門級(立向き、横向き、上向き、管)の場合3ヶ月以上の実務経験が必要となっています。
また、受験にあたっては、「アーク溶接等特別教育」を修了していることが望ましいといわれており、職場にも慣れて仕事の段取りも覚えてくる頃にさらなるレベルアップのために獲得するのがおすすめです。
JIS溶接技能者(T-1F,P)、(N-2V,P)
JIS溶接技能者(T-1F,P)は、Tig溶接での裏波溶接です。JIS溶接技能者を簡単に取得できるレベルであれば、Tig溶接の技術はかなり高くなります。
同じ名前ですが、JIS溶接技能者(N-2V,P)は、被覆アーク溶接の技能資格となり、ここまでの資格取得と比べるとかなり難易度が高くなっております。
合格率は、30%程度と低く、しっかりと練習した上で試験に挑戦する必要があります。
その他
こちらでは、溶接工4年目以降に取るべき難易度の高い資格を紹介します
どれも難易度の高い資格となり充分な経験と知識が必要となる資格ばかりです。キャリアアップ為に取るべき資格としてご紹介します。
- 組合わせ溶接
- ボイラー溶接士
- 半自動溶接
- 溶接作業指導者
まとめ
本記事では、溶接工について詳しく解説しました。
溶接技能者や溶接管理技術者の中にも多くの資格があります。その中でも、溶接技能者のアーク溶接作業者の取得がおすすめです。また、実際に働いている溶接工の年収は平均465.76万円となります。
溶接工のキャリアプランとしては、関連した資格の取得が近道です。溶接工に関連した資格を以下でまとめています。
本記事は、溶接工の仕事を理解して溶接工の仕事に興味を持つか、もしくは溶接工として働いている人は更なるキャリアアップへの情報となります。
是非参考にしてください。
【溶接工として働くために必要な資格】
- 溶接技能者
- 溶接管理技術者
- アーク溶接特別教育
- ガス溶接作業者
- JIS溶接技能者(TN-F)
- JIS溶接技能者(N-2F)
- JIS溶接技能者(T-1F,P)
- 組合わせ溶接
- ボイラー溶接士
- 半自動溶接
- 溶接作業指導者
【溶接工の年収の一例】
- 見習い溶接工:年収300万円~
- 独立親方クラスの溶接工:750万円~1000万円以上
- ベテラン溶接工:年収650万円~800万円
【溶接工の仕事に合う・向いている人】
- 体力に自信がある人
- 慎重な性格の人
- 高い集中力を持っている人
- ものづくりが好きな人