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2020.01.06 溶接topics

溶接の欠陥とは? ~ピット、アンダーカットなどの欠陥の種類から補修まで~

目次
溶接作業は、熟練の腕が必要で長年経験している職人でも欠陥が出る事があります。 溶接欠陥の原因には様々な事象があり、欠陥の種類も様々です。 本記事では、溶接の基本知識から溶接の欠陥が起きる原因、欠陥の種類、溶接の欠陥を補修する方法までを解説します。

溶接の欠陥とは?

溶接の欠陥を解説する前に、溶接の基礎知識についてご説明します。 本記事を読んでいる方はもうご存知の知識も多いですが、復習の意味も含めご確認ください。  

溶接とは?

溶接とは、2つ以上の金属の部材に対して、高い電圧の電気やガスなどで熱や圧力を加えることによって、金属の部材同士(場合によっては溶加材と呼ばれる部材を使用して)を結合させる方法の事を指します。  

溶接の欠陥の発見と検査

次に、溶接の欠陥についてご説明します。 溶接は、基本的に溶接設計に基づき、図面通りに接合していきます。 その後、溶接部外観検査基準(JASS 6-20011)に従って、溶接の欠陥に該当しないか検査されます。   検査時に溶接の欠陥と判断されてしまうと、その製品は、製品としての価値がなくなってしまいます。 また、溶接された製品には、欠陥がまったく無いという状態(無欠陥)はほぼありません。 検査では、「その製品に定められた品質をクリアしているかどうか」を判断しています。 そのため、溶接の知識や技能を習得する場合は、技術を高める事はもちろんですが、欠陥が出たときの補修方法を学習することも職人としてのレベルアップにつながります。   製品の品質を検査する方法としては、専用の装置を使用して内部を破壊せずに検査をする「非破壊試験」と、金属を切断して検査する「破壊検査」などに分けられます。   溶接の欠陥を発見する方法として、非破壊検査や破壊検査のほかに以下の方法があります。
  • 外観検査(アンダーカット、オーバーラップなど)
  • 超音波試験(内部割れなど)
  • 浸透(磁気)探傷試験(表面割れなど)
  • 放射線透過試験(溶け込み不足など)
  溶接の欠陥には様々種類があり、その種類毎によって原因や補修の仕方も変わります。 本記事では、次項より、溶接の欠陥が起きる原因、溶接の欠陥の種類、簡単な補修方法について解説しています。  

溶接の欠陥が起きる原因

溶接の欠陥には大きく分けて2種類あり、「内部」から生じる欠陥と、「表面」から生じる欠陥とがあります。 溶接の欠陥の原因は数多くありますが、錆や水分、電流の強さなどで欠陥になってしまうケースもあります。 溶接の欠陥は、溶接の際の条件(溶接の速度や過電流など)を整えることで発生しにくくなります。  

内部から生じる溶接欠陥

溶接の欠陥が内部から起きる原因には大きく分けて以下4の種類があります。  

ブローホール

ブローホールは、溶接中に発生したガスや、金属内に入り込んだガスが外に出されずに、溶接金属内に残った状態のことを指します。  

スラグ巻き込み

スラグとは、溶接作業の際に、溶接対象の金属から分離した物質の事をいいます。 簡単にいえば、溶接作業中に出たゴミのようなものです。溶接中に一定方向にそのゴミが吐き出されずに巻き込まれることがあります。  

融合不良

融合不良とは、その名の通り、接合する金属が充分に溶け合っておらず、溶接が上手くいかなかった状態を指します。 融合不良が発生すると強度低下に影響がある可能性があります。  

溶込不良

溶込不良は、簡単に説明すると金属内部で完全に溶け切らない部分が発生した状態を指します。溶込不足が発生すると、疲労強度の低下に影響が出やすくなります。また、外部欠陥の種類はビット、アンダーカット、オーバーラップや外観が悪いなどの原因があります。こちらの原因については次項より詳しく解説します。  

外部から生じる溶接欠陥

こちらの章では、外部から生じる溶接の欠陥の種類について8つご紹介します。 簡単な注意点も記載していますので参考にしてください。  

アンダーカット

アンダーカットとは、溶接ビード側面が溶接母材の表面よりも掘られてしまっている状態です。 溶接ビートの幅が開先幅に達していない状態や、アーク溶接などで電流を多くながしすぎなどが原因で発生する欠陥です。 特に振動の多い場所では注意が必要になります。また、熱の膨張伸縮を繰り返すような場所でも注意が必要です。 アンダーカットが発生すると強度低下などに影響が出ます。  

ピット

ピットは、別名で「開口欠陥」といい、溶接金属内に発生した気泡(ガス)が、溶接ビード表面に放出された際に穴となって固まった表面欠陥のことです。 発生原因は、シールドガスの不足や錆や水分によるものです。溶接する際に錆や水分が入らないように準備段階で気を付けましょう。   溶接棒などの溶接に使用する道具がちゃんと乾燥されているかを確認する事も必要です。ピットもアンダーカット同様強度低下に影響がでる可能性があります。 ※シールドガス:大気を遮断するために使用されるガス(溶接中の溶融金属の酸化、窒化などを防ぐため)  

オーバーラップ

オーバーラップは、溶接の際に母材の表面に金属が溢れ出てしまい、その金属が母材を溶かさずに冷えて固まってしまう状態を指します。 原因としては、溶接の際の電流が低すぎることや、溶接の速度が遅すぎるために発生してしまいます。 アンダーカットと真逆のものであり、初心者は特に注意が必要です。  

余盛り不足

余盛り不足は、溶接部分の表面上に浅いくぼみがあり、そのくぼみが母材表面の下に位置している状態です。 余盛りは、JIS定義によって『開先又はすみ肉溶接で必要寸法以上に表面から盛り上がった溶着金属」とされています。  

割れ(表面)

割れとは、高温の状態で溶接する直後に生じるひび割れのことです。 その中でも2種類に分類されます。 凝固時に発生してしまう「凝固割れ」と、多層溶接をする時に溶接した熱が溶けてしまい発生する「液化割れ」です。   その他にも縦割れ、止端割れ、横割れ、クレーター割れなどの種類もあります。 割れが発生すると疲労強度の低下に影響が出やすくなり、割れが深いと強度低下が起こる可能性もあります。  

アークストライク

JISでは、「母材の上に瞬間的にアークを飛ばし、直ちに切ること。 またはそれによって起こる欠陥」と定義されています。 空気(気体)中の放電現象(アーク放電)を使い、同じ金属を繋ぎ合わせる溶接をアークといいます。 そのアークが発生不良により、溶接で溶けきれないで母体に残ったものです。  

ビード蛇行(ビード曲がり、ビードずれ)

ビート蛇行は、溶接線方向にビートの中心が左右に蛇行してしまう溶接欠陥です。 溶接線と線ぐせの方向が直交していたり、線ぐせの矯正不良が原因に挙げられます。ま た、ワイヤの速度や電流の設定値が合わない場合に、発生することもあります。  

開先残存

開先残存は、開先残存溶接(接合する2つの接合面に適切な形の溝を加工して溶接する方法)時に、連続してビートの形成ができてないために溶接されてない部分がある状態です。 ロボット溶接で、欠陥が発生している場合ロボット制御の原因が考えられるので注意しましょう。  

溶接の欠陥を補修する方法

溶接の欠陥を補修する方法として、内部欠陥と表面欠陥の補修方法は下記の通りです。  

内部欠陥の補修方法

  1. ガウジングで十分取除く
  2. 再溶接(本溶接と同等)
※ガウジング:溶接の際に生じた欠陥部分を取り除くために、金属板に溝などをつけること。主にアークを使用します。  

表面欠陥の補修方法

  1. 本溶接と同種の溶接棒で肉盛り
  2. グラインダで完成させる
※母材に傷が生じないように注意すること。品質や完全に機械に影響を及ぼすと考えられる溶接の欠陥は、除去して補修する必要があります。  

まとめ

溶接欠陥の種類や原因、簡単な補修方法について解説しました。 精度の高い溶接をするためには、内部欠陥と表面欠陥の両面から注意しなければなりません。   溶接の欠陥の発生するメカニズムや原因を把握することで、溶接欠陥の補修や対策ができます。 高い精度で溶接をしていくために、欠陥が生じないよう理解を深める必要性があります。 また、無欠陥製品を作り出すことは不可能に近いです。   定められた品質を担保するために色々な検査方法を用いて欠陥を見つけ出します。起きてしまった欠陥については、適正な補修方法を学習し、スキルアップに努めてください。  

【溶接とは?】

  • 溶接は溶接は大きく分けて「溶接」「圧接」「ろう接」の3種類がある。
  • 溶接の中で非常に多く使用されているものはアーク溶接。
 

【溶接の欠陥の発見方法】

  • 外観検査(アンダーカット、オーバーラップなど)
  • 超音波試験(内部割れなど)
  • 浸透(磁気)探傷試験(表面割れなど)
  • 放射線透過試験(溶け込み不足など)
 

【内部から生じる欠陥】

  • ブローホール
  • スラグ巻き込み
  • 融合不良
  • 溶込不良
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