目次
溶接とは
溶接の種類
- 融接
- 圧接
- ろう接
アーク溶接
- アーク溶接の方法
- メリットとデメリット
- アーク溶接の注意点・ポイント
半自動溶接
- 半自動溶接の方法
- メリットとデメリット
TIG溶接
- TIG溶接の方法
- メリットとデメリット
その他の溶接方法について
まとめ
溶接の種類とは?方法やメリットについて
鉄の接合などに用いられる溶接ですが、いくつか種類があります。それぞれの特徴を知らなければ、作業効率を上げるのは難しいです。本記事では、溶接の概要や種類を詳しく紹介します。また、それぞれの溶接の種類のメリット・デメリットも解説するので、ぜひ参考にしてください。
溶接とは
溶接とは、溶接材を添加し、熱や圧力をかけることで、母材同士をつなげることです。鉄骨建築・船舶・鉄道・建築機械・発電プラント・化学プラント・橋・自動車などの構造物に多く用いられています。溶接材は、材料同士を接合する要となる金属です。材料がいくら頑丈でも、溶接材が貧弱だと、その構造物全体の耐久性は低くなります。溶接材は、さまざまなものが販売されており、以下のような目的で添加されます。
- 放電現象を発生させやすくする
- 有害な酸素を還元し除去する
- 完成品の耐久性、靭性、硬度、耐腐食性を高める
- 粘性や表面張力を適度に保ち、完成品の形状や見た目を整える
- 材料同士のすきまを埋める
母材の種類・溶接手段・溶接する環境・完成品のスペック・作業コストなどを考慮して適切なものを選びましょう。
溶接の種類
溶接には、以下のような種類があります。- 融接
- 圧接
- ろう接
融接
母材と溶接材のどちらか一方に熱を加えて接合する方法です。物理的な圧力はかけません。ガス溶接・アーク溶接・非消耗電極式 ・消耗電極式・エレクトロスラグ溶接・電子ビーム溶接・レーザービーム溶接などが該当します。圧接
母材と溶接材を、物理的な圧力によって接合する方法で、熱は発生させません。抵抗溶接・重ね抵抗溶接 ・突合せ抵抗溶接 ・鍛接・摩擦圧接・爆発圧接などが該当します。ろう接
母材より融点の低い溶接剤を使って接合する方法です。母材には一切の熱を加えません。溶かした溶接材は、接合面の微細な隙間に入り込み、母材同士をくっつけます。硬いろうを使う「ろう付け」と柔らかい鉛とスズを用いる「はんだ付け」などが一般的です。
アーク溶接
電極を離す際に発生する放電現象を利用して母材を接合します。放電現象を自発的に発生させる「溶極式」と、他の母材で発生した放電現象を活用する「非溶極式」とに分かれています。アーク溶接で準備するものは、以下の通りです。
- 溶接機器
- 遮光メガネ
- 作業帽子
- 腕カバー
- 革手袋
- 革前掛け
- ハンドシールド
- 脚カバー
アーク溶接の方法
電極を離す際に発生する放電現象を利用して、材料と溶接材とを溶かし母材を接合します。放電の際に発生する温度は、5,000℃~20,000℃ほどです。母材には、電気を通しやすい物質を利用します。具体的な手順は、以下の通りです。
- 1. 溶接機の電源をつける
- 2. 溶接材を接合部分にあてる
- 3. 溶接材に電極をあて溶融させる
メリットとデメリット
アーク溶接は、ピンポイントで熱を加えるため、小さな材料の接合にも使えます。使用機器も安価なものが多いため、複数台を同時稼働させることも可能です。有毒なガスを発生させない手法もあり、人体への悪影響も抑えられます。ただし、フラックスを塗布した電極を用いる場合は、電極の交換やスラグ除去などのコストが発生します。また、炭酸ガスを、母材から酸素を除去するシールド材として用いる場合も、厚板の溶接に不向きです。
アーク溶接も種類によって、メリット・デメリットあるので、自分にあった方法を選びましょう。
アーク溶接の注意点・ポイント
- 電流の大きさを適度に保つ
まずは、ちょうどよい距離感を覚え、経験を重ねながら接合面を整えるのがポイントです。溶接がうまくいったかは、溶接痕を確認しましょう。溶接部に貝がらのような痕が残っていれば成功です。
- 遮光マスクで防護する
- 溶加材のストックを多めにしておく
半自動溶接
溶極式のアーク溶接で、半自動溶接機を使用して材料を接合します。普通のアーク溶接とは異なり、溶接材とガスが自動供給されるのが特徴です。半自動溶接の方法
アルゴンや二酸化炭素などのガスを供給しながら、溶接材を溶かし母材同士を接合します。「CO2溶接」「MAG溶接」「MIG溶接」という、3種類の方法が一般的です。
- CO2溶接:炭酸ガスを用いる方法。鉄の溶接に使われる。
- MAG溶接(マグようせつ):アルゴンと炭酸ガスの割合が8:2になっている。鉄やステンレスの溶接で使われる。
- MIG溶接(ミグようせつ):アルゴンガスを用いる方法。一番技術が必要とされ、アルミやステンレスの溶接に使われる。
メリットとデメリット
一般的なアーク溶接では、片方の手に電極を、もう片方の手に溶接棒を持つ必要があり、習得にはある程度の知識と経験が必要でした。しかし、半自動溶接は溶接材が自動供給されるため、片方の手で作業を行えます。母材と溶接材の種類が合えば、通常の方法より早く溶接できるため、作業効率も向上するでしょう。大量の溶接に向いており、基本をしっかり押さえれば初心者でも習得できます。ガスを使わない方法もあるため、屋外で作業も可能です。
ただし、半自動と言っても、溶接作業自体は手作業で行わなければなりません。溶接材の供給が自動で行われるだけであって、作業者のスキルは依然として重要だからです。
スキルがなければ、大量溶接できるというメリットもなくなります。スキルの向上を意識し、習熟度を高めながら、作業効率を向上させましょう。
TIG溶接
非溶極式のアーク溶接で、ティグ溶接とも呼ばれています。タングステン・イナート・ガス溶接の略です。TIG溶接の方法
電極に消耗しないタングステン、シールド材にアルゴンガスを用いて母材同士を接合します。電極がタングステンに代わるだけで、具体的なやり方はアーク溶接と変わりません。メリットとデメリット
溶接時に火花が発生せず、ほとんどの母材に使用できます。仕上がりが美しく、アーク溶接や半自動溶接より細かな作業が可能です。資格がいらず騒音も発生しないため、DIYなどでも気軽に利用できます。また、消耗しないタングステンを用いるため、電極交換などの手間と労力も不要です。ただし、溶接スピードが遅いため、大量生産品の接合には向きません。半自動溶接と比べると、全体の能率に5~10倍くらいの差がでます。発色が強いので、社交マスクの着用も必須です。
その他の溶接方法について
- 電子ビーム溶接
- レーザー溶接
- ガス溶接
- スポット溶接
- 鍛接
まとめ
溶接とは、熱や圧力をかけることで、母材同士をつなげることです。融接・圧接・ろう接の3種類があり、骨建築・船舶・鉄道・建築機械など、さまざまな構造物に用いられています。
アーク溶接は、代表的な融接で、放電現象によって発生した熱を利用した溶接法です。
放電現象を自発的に発生させる「溶極式」と、他の母材で発生した放電現象を活用する「非溶極式」の2種類があります。
この記事で紹介した「半自動溶接」は溶極式、「TIG溶接」は非溶極式です。
半自動溶接は溶接材が自動供給されるため、大量生産品の溶接に向いています。溶接スピードも早いため、作業効率の向上にも効果的です。
TIG溶接は、電極にタングステンを用いた溶接法です。アーク溶接や半自動溶接より、仕上がりが美しくなります。ただし、溶接スピードが遅いので、大量生産品の接合には向きません。
他にも電子ビーム溶接・レーザー溶接・スポット溶接など、さまざまな溶接法があります。
それぞれのメリット・デメリットを把握して、自分に合った方法を見つけてください。