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2020.06.24 溶接topics

スポット溶接とは?メリット・デメリット・他の溶接方法との違い

目次

溶接方法は様々ありますが、その中でも初心者でも簡単に行えると言われているのがスポット溶接です。そんなスポット溶接とは一体どんな溶接方法なのでしょうか。

メリットやデメリット、他の溶接方法との違いと合わせてスポット溶接とはどんなものか紹介していきます。 

スポット溶接とは? 

スポット溶接とは、様々溶接方法の中の1つの溶接方法です。 

溶接は大きく分けて下記の3つの方法があります。 

 

  • 融接…加熱させて金属を溶かし、溶かした金属が固まることで接合させる
  • 圧接…金属に圧力をかけて接合させる
  • ろう接…「はんだ付け」のように融点の低い溶加材(ろう材)を使って接合させる 
 

スポット溶接は、その中の「圧接」にジャンル分けされる方法で、圧力をかけるときに電気抵抗を利用して行う溶接方法です。電気抵抗によって発熱する熱を使うので別名「抵抗スポット溶接」とも呼ばれています。 

接合したい金属の上下から電極で圧力をかけながら電流を流し、抵抗発熱で金属を溶かし固めて溶接する方法です。この時、点で接合されるのでスポット溶接と言われています。 

 

スポット溶接の特徴 

スポット溶接は溶接部分が小さく、他の溶接よりも仕上がりが綺麗になるため多く利用されており、身近なものでは電車や車の溶接に使われています。仕上がりが綺麗になるため、見た目が大事なものを溶接する時に多く使われます。 

溶接速度が速く、熟練した技術があまり必要ないので作業効率が良く、初心者でも簡単に行えるのもスポット溶接の大きな特徴です。 そのため最近人気が高まっているDIYや作品を自作する時にも使われる機会の多い溶接方法です。

スポット溶接用の機械も、自動車用の大きなものから、DIYなどで使えるような屋内で使える小型なものまで販売されています。 

 

スポット溶接で使われる素材 

スポット溶接は電流を通し加熱することで溶接するため、電気伝導率と熱伝導が高い金属が多く使われます。特にニッケルやステンレスなどは電気伝導率と熱伝導の適性度が高い金属なので、スポット溶接がよく使われます。 

逆に銅やアルミニウム、メッキ鋼板は、電気伝導率や熱伝導がよくなかったり、よすぎることで問題が発生するためあまり使われず、普通のスポット溶接機よりも高い電圧をかけられる機械がないとスポット溶接することができません。 

スポット溶接は薄い素材同士をくっつける場合が多く、瞬間的に融接できないくらい分厚い金属にも使用されることはありません。 ただし、スポット溶接に向いていない金属でも、合金にして電気伝導率や熱伝導を変化させることでスポット溶接をおこないやすくすることもできます。 

 

スポット溶接のメリット 

スポット溶接は大きく分けるとつのメリットがあります。 
  • 溶接速度の速さ 
  • 初心者でも簡単に扱える 
  • コストの削減につながる 
  • 見た目がスッキリしている 
その中でも真っ先に上げられるのが溶接速度の速さです。スポット溶接は点で溶接するため、他の線で溶接する方法に比べ1箇所あたりの作業時間が短時間になります。作業時間が短縮されることで、自然と生産性の向上にもつながります。 

生産性が向上することによって人件費が抑えることができ、コストを削減することができます。 

 

初心者でも簡単に行うことができるのも非常に大きなメリットです。普通の溶接であれば熟練の技術が必要になることもありますが、この溶接方法では決まった場所を溶接するだけなので、経験値が少ない人でも綺麗に仕上げることができます。 

新人とベテランの製品の出来の差が少なく、基礎さえ覚えれば戦力として考えることができます。また、アーク溶接のように爆発や感電などをしてしまう可能性がなく、安全性が高いです。 

 

コストが削減できるというメリットもあります。普通金属の溶接を行う時には溶化剤と言われる材料を別に用意しなければなりません。ですが、スポット溶接では材料の金属自体が溶化剤となるので溶化剤分のコストを削減することができます。 

さらに、スポット溶接では消耗部品が少ないので部品を頻繁に買い替える必要もないので、さらなるコスト削減をすることができます。 

 

スポット溶接は溶接個所が目立たないため、デザイン面でも優れています。 

 

スポット溶接のデメリット 

スポット溶接には大きく分けて3つのデメリットが挙げられます。 
  • 強度が弱い 
  • 厚い金属には使えない 
  • 機材のコストがかかる 
一番のデメリットは強度の問題です。 

どうしても線で溶接しているものと比べて、スポット溶接は点で溶接しているため溶接部分の強度が下がってしまいます。そんなこともあり、強度が必要な場合や大きな衝撃が加わる可能性がある場合には使用することができません。 

そのため、自動車製造の現場では強度が必要な個所にはスポット溶接は使われず、強度を必要としないデザインを重視する箇所で採用されがちです。 

また、気密性や防水性が低いのでタンクや缶などの気密性が必要なものを作る時には使うことができないデメリットもあります。 

 

厚い金属には使用できないのもデメリットです。溶接したい金属同士に瞬間的に電流を流して溶接しますが、瞬間的に電流が流れないような分厚い金属の場合には溶接することができません。 

また、素材の金属によって電極を変える必要があります。それぞれの素材ごとの電極を覚えなければならないのと、作業時に自分で変えなければいけないこともデメリットといえます。 

 

機材に対する費用が高額になってしまうのもデメリットの1つです。高加圧力や高電流を必要とするアルミなどの金属を溶接する場合には機材にも大きな負担がかかってきます。そのため強度が高い機材の購入やメンテナンスにもコストがかかってきます。 

人件費や材料費は削ることができますが、機材に対する費用がかかってしまうので、お金の面に関してはメリットもデメリットも両方あります。 

 

スポット溶接と他溶接方法との違い 

スポット溶接の他にも多くの溶接方法があり、製造するものの用途に合わせた溶接方法が使われています。様々ある溶接方法の中からスポット溶接と似ているもの、溶化剤を必要とする溶接方法をそれぞれ2種類ずつスポット溶接との違いを交えて紹介します。 

 

スポット溶接とプロジェクション溶接の違い 

まず一番似ていると言われているのがプロジェクション溶接です。 

プロジェクション溶接には2種類ありエンボスプロジェクションソリッドプロジェクションの2種類があります 

このプロジェクションとは突起という意味で、エンボスプロジェクションは一方の金属に突起を作り、その部分を加圧しながら電流を流し、抵抗発熱で突起部分が溶けることによって溶接する方法です。 

 

それに対しソリッドプロジェクションは、鋼板の角など元からある突起を使い溶接する方法です。接合した時に、金属同士に隙間が生まれないのが特徴です。この方法を使うと気密性が高い溶接をすることができるので、オイルフィルターなどに使われます。 

特にスポット溶接と似ていると言われているのがエンボスプロジェクションです。電流を使う点は同じですが、スポット溶接は平面に上下から加圧し溶接するのに対し、プロジェクション溶接は事前に片方の金属に突起を付けて溶接を行います。 

 

それ以外はスポット溶接もプロジェクション溶接もほとんど同じで、初心者でも行いやすく機械化しやすい溶接方法です。突起部を溶接するので、プロジェクション溶接の方が比較的簡単な溶接方法です。ただし、溶接前に突起の高さを緻密に揃え、並行にするのがとても難しい作業となります。 

突起があるかないかの差だけなので、JIS製図でも同じ記号が使われています 

 

スポット溶接とシーム溶接の違い 

スポット溶接と比較されやすいのがシーム溶接です。 

シーム溶接は上下にある円盤状の電極で2つの金属を加圧しながら電流を流し抵抗発熱で抵抗結合する溶接方法です。 

スポット溶接とシーム溶接の違いは、抵抗溶接を線で行うか1箇所で行うかです。溶接の方法は金属を挟んで加圧しながら電流を流すという同じ方法なのですが、スポット溶接は点で行うのに対し、シーム溶接は円盤状の電極を使うので線状に溶接をすることができます。 

「スポット溶接」は2つの金属を「点」でくっつけていましたが、「シーム溶接」は二つの金属をくっつけるイメージがわかりやすいと思います。 

「シーム溶接」には、経年劣化や性能劣化を防ぐために、真空状態でローラー電極によって気密封止することができる「真空シーム溶接」などもあります。 

気密性・水密性が高い溶接方法なので缶ジュースやタンクなどの気密性が高いものを作る時に良く使われます。シーム溶接はラップシーム溶接マッシュシーム溶接とも呼ばれています。 

 

シーム溶接では薄い金属を気密性高く溶接することができるので材料費を抑えることがきるというメリットがあります 

JIS製図記号も非常に似ており、スポット溶接の記号にイコールのような横棒が2本ついているだけです。この2本の横線で円盤状の電極を表しています。 

 

 

スポット溶接とレーザー溶接の違い 

レーザー溶接という溶接方法がありますが、スポット溶接とレーザー溶接は全く別の溶接方法です。 

レーザー溶接は、レーザー光を熱源として利用し溶接する方法です。レーザー発振機から光を送り、集光型に集められたレーザー照射体からレーザー光を発射して、局部的に金属を溶融させ凝固させることで接合させる溶接方法です。 

レーザーにも種類が複数あり、CO2レーザーYAGレーザーファイバーレーザーディスクレーザーなどがあります。 

CO2レーザーが一番古い歴史をもってり、一般的に使われています。ディスクレーザーは、薄い円盤状になっているレーザーを発振する発振出力が幅広いので、波長によって用途を使い分けることができるメリットを持っている溶接方法です。 

 

ディスクレーザーは溶接以外にもレーザー切断など色々な用途で使われています。 

スポット溶接に比べ、レーザー溶接は細かい溶接ができます。レーザー光は強力で人為的にコントロールしやすいので、レーザー光を集約し細かい溶接が可能です。さらに、レーザー光をコントロールして局所的に熱を加えることができるので、短時間で接合をすることができます。 

 

最近ではさらに歪みの少ないファイバーレーザーが開発され、さらに細かい作業を歪みなく行うことができるようになりました。 

ただし、強力で高熱の光を使用するので、それに対する安全対策もしなければなりません。レーザー光は人の目で見えないので、光の反射による火傷や、網膜を損傷させてしまう可能性があります。なので、専用のメガネや反射作用があるカバーなどを使い、身を守らなければなりません。 

 

レーザー溶接はスポット溶接と違い、溶接する時に溶化剤が必要になります。溶解する時に、金属が酸化してしまわないように不活性ガスを照射しながら溶接しなければなりません。 また、スポット溶接は接触加工をするのに対して、レーザー溶接は非接触加工をすることができるので、電極のメンテナンスが不要なのも大きな違いです。 

 

スポット溶接とアーク溶接の違い 

アーク溶接スポット溶接とは全く違う溶接方法です。 

スポット溶接は金属に圧力をかけて接合する圧接に分類されるのに対し、アーク溶接は、放電現象の1つであるアーク放電を使い溶接する方法で、融接に分類される溶接方法です。アーク放電を使うので電気溶接と呼ばれることもあります。 溶接の中でも最も有名方法ですが、非常に強い光が発生し、火花を散らせながらする溶接なので、他の溶接と比べ危険度が高い方法でもあります 

 

アーク溶接で使うアーク放電は2万度を超えることもあり、溶接の他にもプラズマ切断や放電加工にも使われています。スポット溶接よりもアーク溶接は高温で溶接するので、どんな金属でも溶接することができます。ですが、放電現象を利用するので主に電気伝導をすることができる金属で利用されます。 

 

アーク溶接は非常に多くの種類があります。 

大きく二つに分けると、電極が融接して消耗する消耗電極式溶接、溶接棒を金属に溶かし込む非消耗電極式溶接に分けられます。 

 

消耗電極式溶接の中で最も一般的なものは被覆アーク溶接です。手溶接法と呼ばれることが多く、溶接棒を使い分けることで様々な金属に対応できるので、一番主流に使われているものです。 手溶接法と言われている通り、手で溶接をするので細かい部分などの溶接にも向いています。 

 

非消耗電極式溶接ではTIG溶接が一番一般的です。タングステン電極を使いアークを発生させ、ヘリウムガスなど不活性ガスでシールドをして溶接する方法です。タングステンを電極として使うので、電極を消耗せずに溶接することができます。 

 

どちらの種類のアーク溶接も溶化剤やタングステンなどの消耗品が必要になってしまうので、消耗品の費用が多くかかってしまいます。 

 

スポット溶接は機械で行うため初心者でも比較的簡単にできる溶接方法ですが、アーク溶接は基本的に全て手作業で行わなければならないので、作業者の経験値の差で出来上がりに差が出てしまいます。 

 また、アーク溶接は今まで紹介した他の溶接方法と違い、危険性がとても高いため特別な講習を受けなければなりません。アーク溶接特別教育講習は講義と実技があり、それを両方受講し修了証を得なければアーク溶接を行うことができません。 

 

まとめ 

スポット溶接は点で溶接する方法で、我々の身近で使われています。初心者でも簡単に綺麗に仕上げることができ、効率がとてもいい溶接方法です。少し初期投資にお金がかかってしまうのが難点ですが、溶化剤が必要ない分コスト削減に繋がります。 

似ているプロジェクション溶接やシーム溶接などとの違いを理解しておくと、さらに知識の幅が広がり、正しい溶接方法の選択がしやすくなります。一度だけではなく何度もこの記事を読み返して、スポット溶接や他の溶接方法の理解を深めてみてください。 

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