目次
本記事では溶接かぶり面についてどんな種類や特徴があるのか、また、選ぶときのポイントには価格や軽さ以外にどんなものがあるのかを紹介します。さらに、それらのポイントからおすすめの溶接かぶり面や、初心者が選ぶ場合に何を重視したら良いのかなどを紹介します。
溶接かぶり面とは?
溶接かぶり面とは、溶接の際に発生する有害光線から目や体を守る保護具です。溶接かぶり面は難燃性の材質で作られたものが多く、手持ち型やかぶり型があります。
アーク溶接などは、アークを発生させて金属を溶接しますが、そのアークには目に見える可視光と目に見えない紫外線や赤外線が含まれています。特に有害な紫外線や可視光は、人体に影響を与えるものですから、溶接を行うときに溶接かぶり面を着用しなければなりません。
遮光プレートの装着方法としては、遮光プレート1枚とカバープレート2枚を用意し、手持ち面の内側から1枚の遮光プレートを2枚のカバープレートで挟むようにセットします。
なお、遮光用のプレートとカバープレートは、ガラスの他にプラスチック製のものもあります。
遮光プレートとは
遮光プレートは、溶接の作業時に発生する有害光線から眼を守るためプレートです。ガラスタイプのものと、プラスチックのタイプがあって、ガラスタイプのものは傷が付きにくく、コストが安いという特徴があります。
また、プラスチックタイプのものは、割れにくく、軽量というメリットがあります。
カバープレートとは
カバープレートは、遮光プレートの外側に装着し、基本的に遮光プレートの内側にも装着し、遮光プレートに埃などが付着しないようにします。
紫外線の障害とは
紫外線の障害には、電光性眼炎症という病気があります。電光性眼炎症は角膜の表面に障害を与える病気で、症状としては目がゴロゴロと異物が入ったようになり、涙が流れて瞼の痙攣などを伴います。
電光性眼炎症の症状は、通常48時間程度でおさまりますが、皮膚に紫外線を受けると日焼けのように水ぶくれを起こしたりします。
可視光による障害とは
可視光の障害には光網膜炎という病気があります。光網膜炎の症状は、視野の一部が見えなくなったり、視界がかすんで見えなくなるといったことがあります。
光網膜炎の症状は、数週間から数ヶ月続きますから、これらの障害を避けるためにも溶接かぶり面を着用する必要があります。
溶接かぶり面の種類
溶接かぶり面には主に以下の5つの種類がありますが、それぞれについて以下に解説します。
- 手持ちタイプ
- 被りタイプ
- 革製遮光面
- 自動遮光面
- 溶接用ゴーグル
手持ちタイプ
手持ちタイプの溶接かぶり面は、昔からある溶接かぶり面で、取っ手の部分が下に付いていて、それを片手で持って使用します。溶接機を購入した際にセットで付いているのは、だいたいがこの手持ちタイプですから、最初から持っている人も多いでしょう。
価格は自動遮光面と比べて圧倒的に安いのですが、作業するときに両手が使えないという不便さがあります。
また、装着が遅れたりズレたりすることで、間違って光が目に入ってしまう危険もあります。手持ちタイプのものは、通常外側から素ガラス、遮光ガラス、素ガラスと3枚を重ねて使用します。
一番外側の素ガラスがスパッタ(金属の表面から飛び出した原子)で汚れたら、廃棄し内側の素ガラスを外側に持ってくるようにすると経済的です。
被りタイプ
被りタイプの溶接かぶり面は、手持ちタイプと同じで自動遮光面と比べるとかなり安価です。しかし、手持ちタイプと違って両手が使えるという利点があります。
ただし、スパッタによって素ガラスが汚れた場合は、交換の必要がありますから、その都度手間やコストがかかるといったデメリットがあります。
革製遮光面
革製遮光面は革で作られた遮光面です。軽量で体にも負担がかかりませんから、狭い作業場所などでの溶接に適しています。
革製遮光面は、ハンズフリーで両手を使って作業ができ、装着方法もマジックテープなどで簡単に装着できますし、牛革によって、顔や首、肩などを火の粉から守ってくれます。
遮光ガラスも跳ね上げ式のものもあり、しかも遮光ガラスと透明ガラスを簡単に切り替えることも可能な革製遮光面もあります。
自動遮光面
自動遮光面は、ヘルメット取付型やキャップ型で、戦隊モノに出てくるような形状です。自動遮光面には、明るさを調節できる液晶フィルターやアーク点滅を検知する光センサーが搭載されています。
液晶フィルターは、アークが点灯しているときには暗く、アークが消灯しているときには明るくなるように自動的に制御するようになっています。自動遮光面のメリットとしては、上記の他に、手持ち型とは異なり、両手を使って作業でき、常時着用できることです。
自動遮光面では、ヘルメットに取り付けるバンドを装着したヘルメット取付型と、ヘッドバンドを装着して直接被るキャップ型の2種類があります。
溶接用ゴーグル
溶接用ゴーグルは、自動遮光面と同じように、常時装着できて両手を使って作業できるタイプです。
自動遮光面と違って、どんな形のヘルメットでも使用できることや、メガネをかけたまま着用できるというメリットがあります。ただ、他の溶接かぶり面と比べて、価格が多少高いというデメリットがあります。
溶接かぶり面を選ぶときのポイント
溶接かぶり面は、アーク光から眼や皮膚を保護するために重要なアイテムですが、どのように選んだら良いか次項から解説します。
①遮光度
溶接かぶり面を選ぶ時、まず適切な遮光度のあるものを選びます。溶接に使う電流値によって使用すべき遮光番号がJIS規格で定まっていますから、購入する前に、遮光度が適切なものかどうかを確認する必要があります。
遮光度番号は、5から16まで幅広く分けられていて、たとえば、30A以下の電流を使用する場合は、遮光度番号は5か又は6が適切な番号です。逆に500A以上の電流で使用する場合は、遮光番号の15や16が適切です。
遮光度番号が大きいものほど良いというわけではありません。たとえば、定電流を使用するのに遮光番号の大きなものを使用すると、暗すぎてかえって作業効率が悪くなります。
ですから、使用する電流に見合った遮光番号を選ぶ必要があります。
②遮光速度
遮光速度とは、アーク光を感知してから遮光するまでの時間を表します。遮光速度が遅いものだと、アークの発生から遮光するまで時間がかかりますから、アーク光が眼に入る時間が長くなってしまいます。
アーク光が眼に入る時間が長いほど、眼にダメージを与えることになります。それが、非常に僅かな時間であっても、長時間の作業となると人体に及ぼすダメージは大きくなるでしょう。
遮光速度には、明確な基準はありませんが、1/15000~1/25000秒というのが一般的になっています。極端に遅い遮光速度のものを選択しないようにすれば問題はないでしょう。
③軽さ
溶接作業は重たいものよりも、軽いものの方が作業効率はいいですし、特に長時間の溶接作業では重い溶接かぶり面では、疲労が増すことになります。
軽さを重視して溶接かぶり面を選択することは、重要な要素だといえます。
④使いやすさ
溶接かぶり面は、使いやすさや軽さなど、人気の商品もあって迷うところですが、他の人が使いやすいからといって、自分に合ったものとは限りません。
実際に自分が作業する場合、自分に合った使いやすいタイプの溶接かぶり面を選ぶ必要があります。
⑤費用
溶接かぶり面の種類には多くのものがありますが、価格帯においても数千円のものから、5万円以上するものまでさまざまです。あまり安価なものはおすすめできませんが、現在では割に低価格で性能が良いものが多く出回っています。
また、高価だからといって、自分の目的に合わないようなものを選んで後悔することもあります。自分に合った溶接かぶり面で、しかも自分の予算に見合ったものを選ぶようにしましょう。
おすすめの溶接かぶり面は?
溶接かぶり面には、上記の遮光度、遮光速度、軽さ、使いやすさ、費用といった項目で選ぶのが一般的ですが、遮光度や使いやすさ、費用や軽さについておすすめの製品を紹介します。
遮光度や使いやすさでおすすめの商品
遮光度や使いやすさの点でおすすめの商品を、現在の売れ筋ランキングトップ10から抜粋して紹介します。
KKMOONの自動遮光溶接面
時間設定スイッチを搭載し、溶接を停止した瞬間に設定された遅延時間に応じて液晶フィルターがクリアな視界に戻りますから、その都度溶接部分を正確に確認することができます。
遮光速度は1/25000秒で、価格は4,299円ですから性能の割にはかなりリースナブルです。
ストレートの自動遮光溶接面
アーク溶接からガスシールド溶接まで重宝するマスクです。遮光速度は1/25000秒で、遮光度合いは9~13です。
ヘッドバンドの深さや締付け、角度などを自分で微調整することができ、違和感を感じにくい装着感で、価格は4,932円です。
スズキッドのアイボーグアルファ2
作業者の動きに合わせてボディの重心を一定に保つように設計されていて、長時間装着していても首や肩に負担がかかりにくいようになっています。
高品質と使いやすさの両方を兼ね備えていて、遮光速度は1/25000秒、価格は11,419円です。
スリーエムジャパンのスピードグラス自動遮光溶接面 9100XXI 501826
装着していない場合とほぼ同じ視界を確保できる、サイドウインドウを採用した溶接マスクで価格は52,958円です。
広い視野で周囲を確認しやすいため、溶接工事現場で使うプロの方にもおすすめです。内部に排気口が4箇所あって、呼気を速やかに排出しますから、ムレや熱気による液晶フィルターの曇りを予防し、息苦しさも軽減できます。
マイト工業のレインボーマスク INGO-760
すっきりとした鮮明な視界を確保できますから、作業性の良い商品で価格は25,300円です。遮光の度合いも4つのモードから選択でき、感度は11段階まで調節可能です。
低価格でおすすめの商品
もっとも低価格でしかも売れ筋の溶接かぶり面は「アカネエーショップの自動遮光溶接マスク」で、価格は1,890円とかなりリーズナブルです。
遮光速度も1/30000秒の速さがあり、ソーラーパネルと充電バッテリーを内蔵していますから、電池交換も不要で、いつでもどこでも溶接作業を行うことができます。
その他の商品では、RILANDのX501(6,480円)とRILANDのX601(8,480円)、トラスコのTSM20S(4,602円)といったものがおすすめです。
軽さを重視したおすすめの商品
売れ筋トップ10のランキング1位の商品で、BLUE CLLKIEの自動遮光溶接面は、重量が340gとかなり軽量で、しかも2,199円という低価格です。
光戻り速度や感度調整機能が付いていて、アーク溶接からTIG溶接まで、幅広い使い方ができます。また、超軽量で首に負担がかからず、風通しもよいことから暑い時期の作業にはぴったりの商品です。
その他、3Mの701120(重量が360gで価格は37,094円)、マイト工業のMR-460(重量375gで価格は18,711円)、イクラのISK-RGG2WS(重量が380gで価格は33,048円)といった商品がおすすめです。
初心者におすすめの溶接かぶり面は?
初心者が溶接作業するさいに、もっとも適した溶接かぶり面は、両手が使えるようなタイプで軽量のものがおすすめです。
遮光度に関しては、もちろん電流に見合った遮光度のものを使用し、遮光速度についても一般的な1/15000~1/25000秒のものを選びます。
また、初心者にとっては、作業の効率を考えて使いやすいことが一番です。そのことからも、初心者におすすめの溶接かぶり面は、軽量でハンズフリーで、しかも作業環境に合った使いやすい製品がおすすめです。
手持ちタイプの溶接かぶり面は、確かに安価で手軽に使えそうですが、溶接作業を片手のみで使うことになりますから、初心者にはあまりすすめられません。
特に溶接に不慣れな初心者は、手持ちタイプのものだとミスをしてしまいがちです。実際に手持ちタイプのものを使用して、誤ってアーク光を直接見てしまうといった事故も起きています。
初心者のおすすめの溶接かぶり面のタイプは、やはり被り型のものです。被り型のものはヘルメット型や面型などがありますが、ヘルメット型の場合、顔だけでなく頭全体をカバーしますからおすすめです。
性能的にどのタイプがいいか迷う場合は、重さで判断します。特に初心者では、重いヘルメット型のものをずっと付けていると、溶接作業に集中できなかったり、肩がこったりすることもありますから、できるだけ軽いものを選ぶようにしましょう。
また、お面型には跳ね上げタイプのものもあり、その都度脱着する必要がありませんから、溶接作業もしやすく、初心者には適しています。
また、自動遮光タイプのものが人気ですが、初心者にとっても作業性が良いのでおすすめです。遮光度については、初心者にとって選択が難しい場合もありますから、自動遮光タイプのものを選びます。
自動遮光タイプのものは、光の強さに応じて自動的に遮光を調節してくれる便利な液晶タイプで、手動でも調節できるスイッチ付きですから、自分でも調整できるようになっています。
ただ、遮光度の調整幅や反応速度については、溶接マスクごとに違いますから、購入前に確認する必要があります。
まとめ
今回は、溶接用のかぶり面について、どんな種類があって、それぞれどんな特徴や使い方があるのかを紹介しました。- 溶接かぶり面とは、溶接の際に発生する有害光線から目や体を守る保護具です。
- 溶接かぶり面の種類には、主に手持ちタイプ、被りタイプ、革製遮光面、自動遮光面、溶接用ゴーグルといった5つの種類があります。
- 溶接かぶり面を選ぶときのポイントは、遮光度、遮光速度、軽さ、使いやすさ、費用といったものがあげられます。
- 初心者におすすめの溶接かぶり面は、作業の効率を考えて使いやすいことが一番です。軽量でハンズフリータイプで、しかも作業環境に合った使いやすい製品がおすすめです。