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2023.10.31 溶接topics

特徴的な鉄骨構造形式/ラーメン構造・トラス構造・ブレース構造

目次

鉄骨建築は他の建築方法に比べて自由度の高い建築物を作ることができます。そのための様々な部材の組み方を「構造形式」といいます。

この記事では一般的な鉄骨造の構造形式である

 

ラーメン構造

ブレース構造

トラス構造

 

3種類の特徴についてご紹介します。

 

 

ラーメン構造

ラーメン構造は、変形しないように柱と梁の接合部を剛接合(※剛接合とは、接合部が変形しない接合方法)とした構造形式です。「ラーメン(Rahmen)」はドイツ語で「額縁」という意味です。横からの揺れに強い特徴があるため、大きな商業施設やオフィスビルに用いられています。

 

 

メリット

空間が広く取れる

柱と梁の接合部分が完全に固定されているため、強度を持たせた壁を配置する必要がありません。窓や扉の位置を自由に決めたり、広い空間を確保したりと設計の自由度が高くなります。

 

間取りの自由度が高い

上に記載した通り、室内の間取りを考慮する際に壁の配置を考える必要がありません。そのため、自由な間取りを作ることができます。

将来リノベーションをする場合も、居室の壁を自由に設置することができます。

 

設計と施工が比較的容易

基本的に柱と梁だけで建物全体を支えているため、構造設計は比較的簡単です。また、柱と梁の接合部分が強いため、施工時に強度を心配しながら進める必要がありません。部材の施工や加工も複雑ではないため、工事はスムーズに進みます。

 

 

デメリット

柱や梁などの部材が大きくなりやすい(ブレース構造と比べた場合)

ブレース構造は地震力をブレースが負担する一方、ラーメン構造はブレースを使用しません。そのため、柱と梁だけですべての荷重に耐えなければなりません。よって、少ない部材で荷重に耐えられるよう、それぞれの部材を大きくする必要があります。また、部材が大きくなる分鋼材の費用も高くなります。

 

地震で変形が大きくなりやすい(ブレース構造と比べた場合)

ラーメン構造は、柱と梁の接合部を剛接合し耐震性を高めています。柱や梁のみで建物を支えているため、ブレース構造と比べると地震の横揺れに弱く、耐震性が劣るといえます。

 

 

ラーメン構造が使用された建築物

国立西洋美術館

20世紀を代表する建築家の一人であるフランスの建築家ル・コルビュジエ(1887-1965)の設計により、1959(昭和34)年3月に竣工した歴史的建造物です。空間を広く取れるラーメン構造のメリットを活かしています。

 

ファンズワース邸

近代建築の3大巨匠の一人として有名なミ-ス・ファン・デル・ロ―エが担当したアメリカ・シカゴ郊外にある歴史的な家です。外壁はガラス張り、内部はユニバーサルデザインと呼ばれる柱のない空間にしており、ラーメン構造をデザインとして活かしています。

 

 

ブレース構造

ブレースとは、柱と梁で構成されたフレームの対角方向に配置する斜材のことです。ブレースが使われている構造体を「ブレース構造」といいます。四角形に×が入った形をしているブレース構造は、柱や梁などの主要部材が壊れにくく、地震や風の力に抵抗することができます。そのため、ラーメン構造に次いで多く採用されています。

一般的な鉄骨のブレース構造は、木造住宅の筋交いのようなものを指します。しかし、ブレースという名称の中には「制震ブレース(ダンパー)」というエネルギーを吸収する能力に優れたものもあります。

 

 

メリット

細い部材で大きな力を受け流すことができる

斜めに設置されたブレースにより三角形ができると、ブレースに水平力が流れます。その結果、地震や風の力に抵抗でき、変形を抑えられるようになります。ブレースの伸び縮みを利用したブレース構造は、細い部材でも建物を硬くすることが可能です。

 

建物の変形を防止することができる

ブレースの役割は地震が起こった際、柱や梁を変形しにくくすることです。柱と梁による三角形を利用し、水平力に対抗することで、柱や梁などの主要部材は壊れにくくなり、地震による構造体の変形を防ぎます。

 

取り付けがしやすい

ブレース構造は、ボルトを締めるだけで接合することができます。溶接を行う必要がないため、工期や工数が少ないこともメリットです。

 

 

デメリット

間取りの自由度が低くなる

強度を重視した構造のため、ブレースをバランスよく配置する必要があります。それゆえに、ブレースの位置によっては間取りや設計が制限されてしまう場合があります。

 

メンテナンスをする必要がある

ブレース構造は耐火被覆がなされておらず、鋼材がむき出しになっていることも多いです。外に出ている鋼材は錆びやすくなるため、ブレースが錆びないようなメンテナンスや防水処理をする必要があります。

 

 

ブレース構造が使用された建築物

立体駐車場

ブレースにより、水平荷重を負担できます。また、小さい柱や梁部材を使用することで、建設コストを低減することができます。

 

神奈川大学みなとみらいキャンパス

2021年4月、神奈川大学が新たに開設した「みなとみらいキャンパス」。耐震・制震要素としてブレースを用い、建物を長寿命化しています。ブレースは内部空間に入り込んでいます。

 

 

トラス構造

トラス構造は、部材同士を三角形につなぎ合わせた構造形式。一般的に体育館や工場、ドームなど、大スパン(10~100m程度)の柱のない空間を求められる建物で梁材として用いられることが多いです。

 

メリット

安定性がある

「三角形」は多角形の中で一番強度が強いとされています。三角形の部材が組み合わさっているため、外力を加えても部材間には軸方向に軸力(伸び縮みする力のこと)しか作用しません。トラスの部材には曲がる力がかからないため、安定性があり耐震性も高くなります。

 

細くて軽い部材で大スパンの骨組みができる

小さな部材の組み合わせにより軽量化することができ、重量を抑えた構造物を建てることが可能になります。また、三角形であることでバランス良く荷重を分散できるため、通常の梁よりも大きな荷重に耐えることができます。そのため、大規模空間の屋根構造等にも適した構造形式です。

 

デザイン性が高い

トラス構造で造られた建築物や橋梁は、意匠的にも魅力があります。大きな曲線を描いた構造物を造ることができるため、デザインを求められる建築物にも多く採用されています。

 

 

デメリット

他の構造よりも施工が困難

三角形の部材を組み合わせて建築するため、構造はとても複雑です。

部材には上弦材・下弦材・斜材・鉛直材などの様々な部材が必要となります。その上、それぞれの部材は大きさが異なる場合もあります。接合部が複雑化するため、職人の高い技術が必要です。また、数多くの部材を加工するため、他の構造と比較すると人件費を含む工事費が高くなります。

 

トラス架構としての「せい」が大きい

トラス構造には、高さを出すことで各部材に作用する軸力を小さく抑える特徴があります。トラス架構全体の梁せい(梁の高さ)は大きくなるため、梁の高さを確保できる橋梁や大きな構造物には採用できますが、一般的な建築物は高さに制限があるために採用できない場合もあります。

 

 

トラス構造が使用された建築物

東京ゲートブリッジ

トラス構造の橋は、単なる桁でつくる橋(プレートガーダー橋、桁橋)よりも変形が小さいため、より長い距離を架けることが可能です。

東京ゲートブリッジは、2,618mに及ぶ東京湾を横断する橋です。羽田空港に近いことによる高さ制限と、船舶の航行を妨げない桁下の高さ制限がありましたが、その制限の中で建設するために、トラス構造が採用されたそうです。

 

 

まとめ

今回は各構造形式について説明しました。構造形式も、耐震性については一長一短あるため、建物の用途や間取りなどによって選択する必要があるでしょう。

影山鉄工所は、2021年に国土交通大臣Hグレード認定工場を取得した、建築鉄骨製造事業を行っている会社です。溶接を核とした高い鉄加工技術を武器に、近年はマンションや商業施設等の大型物件の重量鉄骨を主に製造、施工しています。鉄骨工事のご相談やご質問等、お気軽にお問い合わせください。

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