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2025.01.28 溶接topics

溶接ヒュームとは?その危険性と対策を徹底解説

目次

溶接作業に携わる方々にとって、「溶接ヒューム」という言葉は馴染み深いものです。しかし、具体的にどのようなものか、その健康リスクや対策について詳しく理解している人は少ないのではないでしょうか。本記事では、溶接ヒュームの基礎知識から健康への影響、安全対策までを解説します。

溶接ヒュームとは?

溶接ヒュームとは、溶接により生じた蒸気が空気中で凝固した固体の粒子です。ヒューム(Fume)は、物質の加熱や昇華によって生じる粉塵、煙霧、蒸気を指します。溶接時に使用される金属材料や溶接棒、溶接電極などが高温で溶解、蒸発し、その後冷却されて固体の微粒子が生じます。この微粒子は非常に小さく、上昇気流に乗って上昇し拡散されるため、知らない間に吸い込んでしまう可能性があります。令和2422日の労働安全衛生法施行令の改正により、溶接ヒュームが特定化学物質として規制対象に追加されました。これにより、作業環境の改善や防護具の着用が義務化され、作業者の安全がより重視されるようになっています。

主な成分

溶接ヒュームの成分は、使用される材料や溶接方法によって異なります。代表的な成分には以下のものがあります。

無機鉛

有機水銀

カドミウム

マンガン

クロム(六価クロムを含む場合もあり)

亜鉛

これらの成分の多くは、健康に有害な影響を及ぼす可能性があるため、適切な対策が必要です。

溶接ヒュームの健康リスク

溶接ヒュームを長期間吸い込むことにより、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。以下に主な健康リスクを挙げます。

呼吸器系疾患

溶接ヒュームの吸入は、肺炎や気管支炎などの呼吸器系の病気を引き起こす可能性があります。また、長期間の吸入により慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺線維症を発症するリスクもあります。これらの疾患は、作業者の生活の質に大きな影響を与えるだけでなく、長期的な治療が必要になる場合もあります。

神経機能障害

溶接ヒュームは、吸引すると細胞まで到達する「吸入性(レスピラブル)粉じん」です。特に、溶接ヒュームに含まれる金属成分の「マンガン」が体内に蓄積すると、感覚障害や著しい疲労感、不眠等の神経系に悪影響を及ぼすこともあると報告されています。重度の場合、運動障害や認知機能の低下が発生する可能性も指摘されています。

発がん性

国際がん研究機関(IARC)は、溶接ヒュームを「ヒトに対して発がん性がある(グループ1)」と分類しています。特にステンレス鋼などを溶接する際に生成される六価クロムやニッケル化合物は、肺がんなどのリスクが高まることが知られています。これにより、作業者には定期的な健康診断が求められます。

溶接ヒュームへの対策

健康リスクを低減するためには、適切な対策が必要です。以下に具体的な方法を紹介します。

換気システムの導入

作業場に十分な換気設備を設けることで、ヒュームの濃度を低下させることができます。動力により全体換気を行う全体換気装置による換気の実施または、プッシュプル型換気装置、局所排気装置(LEV)を使用することが推奨されます。これにより、溶接ヒュームが作業場全体に広がるのを防ぐことができます。

適切な防護具の使用

個人防護具として、高性能の防じんマスクや電動ファン付き呼吸用保護具を着用することが重要です。現在では、金属をアーク溶接する作業を行う場合には、屋内・屋外および溶接方法を問わず呼吸用保護具を使用しなければなりません。防じんマスクの規格に基づき、作業環境に合った適切なものを選ぶ必要があります。

作業環境の管理

作業場の定期的な清掃や点検、メンテナンスを行い、作業場を清潔に保つことでヒュームの蓄積を防ぎます。また、使用済みのぼろやウエスを適切に処理することも重要です。これにより、ヒュームが再び作業環境に放出されるリスクを低減できます。

作業時間の管理

長時間の連続作業は避け、適切な休憩を挟むようにしましょう。これにより、労働者の疲労を軽減し、ヒュームにさらされる時間を短縮できます。また、労働者に溶接ヒュームのリスクについて教育し、適切な作業時間管理の重要性を周知することも効果的です。

特殊健康診断の実施

金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者には、雇入れまたは当該業務への配置換えの際およびその後6月以内ごとに1回実施することが義務付けられています。さらに、健康診断の結果、他覚的な症状が認められる者で医師が必要と判断した場合は、規定の事項に基づき追加の健康診断を実施します。

法規制とガイドライン

溶接ヒュームに関する法規制やガイドラインは国ごとに異なりますが、多くの国で作業環境中の許容濃度が定められています。作業者は最新の規制や基準を確認し、遵守することが求められます。

日本

労働安全衛生法に基づき、溶接ヒュームの濃度が管理されています。

アメリカ

OSHA(労働安全衛生局)やNIOSH(米国労働安全衛生研究所)およびACGIH(米国産業衛生専門家会議)がガイドラインを提供しています。

ヨーロッパ連合(EU

REACH規則」により、有害物質の使用が厳しく管理されています。

まとめ

溶接ヒュームは、溶接作業における重要な健康リスクの一つです。しかし、適切な知識と対策を持つことで、その影響を最小限に抑えることが可能です。溶接作業に携わる方々やその管理者は、安全な作業環境を維持する努力を続けましょう。また、常に最新の情報を把握し、法律に従って定期的な健康診断を受けるようにしましょう。

70年以上の歴史を持つ影山鉄工所では、溶接作業における安全対策に積極的に取り組んでいます。溶接作業の安全性向上は、従業員の健康を守るだけでなく、高品質な製品を提供するための基盤でもあります。鉄骨加工や求人についての詳細は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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RECRUIT | 鉄人の創生物|影山鉄工所 (kageyama-co.jp)

【参考文献】

パンフレット(屋内溶接ヒューム)

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