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溶接に興味を持っておられる方の中には、「溶接用語が分からない」「専門用語が多くて難しい」と感じる方も多いのではないでしょうか。言葉の意味が分からないと難しそうに感じてしまいがちです。
この記事では、溶接初心者がつまずきやすい用語について、実際の製造現場でも使われている基本的な言葉を中心に、一覧形式でやさしく解説します。用語の意味が分かることで、溶接はぐっと身近で理解しやすいものになります。
溶接の基本用語
「溶接とは何か」「溶接の仕組みが知りたい」という初心者の方に向けて、まずは基本となる言葉から整理していきます。
溶接
溶接とは、2個以上の金属同士を、熱や圧力、またはその両方によって一体にすることです。ネジやボルトとは違い、金属そのものが一体化するため、強度の高い接合ができるのが特徴です。鉄骨製造の現場では、建物を支える重要な部材同士をつなぐために欠かせない技術で、DIYでは家具や雑貨づくりに活用されています。

母材
母材とは、2個以上の金属の「溶接される材料」のことを指します。
鉄板やパイプ、ステンレス板など、溶接される側の材料が母材です。溶接の仕上がりや強度は、この母材の種類や厚みに大きく左右されます。
溶加材
溶加材とは、溶接時に母材に加えて溶かす金属材料のことです。
被覆アーク溶接では溶接棒、半自動溶接ではワイヤが溶加材にあたります。母材との相性が重要で、材質が合っていないと強度不足や割れの原因になります。
アーク
アークとは、電極と母材の間に発生する強い電気の放電現象です。
溶接中にまぶしい光が出るのは、このアークが原因です。アークは直接見ると目を傷める危険があります。そのため、溶接面の着用が必須です。
フラックス(被覆剤)
フラックスとは、アーク安定剤やスラグ形成剤、脱酸剤、合金剤、鉄粉などで構成される原料粉末のことを言います。簡単に言うと、溶接中に金属が汚れたり空気と反応したりしないように守ってくれる粉です。
溶接部の品質を向上させるために使用されます。 被覆アーク溶接棒では棒の被覆材に、フラックス入りワイヤではワイヤ内に内包されています。
スラグ
溶接の際に金属の表面に浮き出てくる、非金属物質です。溶接時に溶融した金属から分離して発生するもので、現場においては「のろ」とも呼ばれています。
溶接の際に溶けたスラグが溶接金属中に残ってしまうことを「スラグ巻き込み」といい、溶接欠陥の一種になります。
開先(グルーブ)
開先とは、板やパイプの接合端を斜めに削った「溝状のくぼみ」のことをいいます。
溶接金属が奥までしっかり入り、強度や必要な溶け込みを確保することが目的です。

仮付け
本格的に溶接する前に、部材が動かないように"軽くとめておく"作業のことです。
いきなり全部を溶接してしまうと、熱で金属が歪んだり、位置がズレたりすることがあります。そこで、数カ所を短く溶接し、形をキープしてから本溶接に進みます。この仮付けを丁寧に行うことで、失敗しにくく、綺麗な仕上がりにつながります。
治具
治具とは、溶接や組立作業をするときに部材がズレたり、反ったりしないように一時的に支えるための補助器具のことです。
例えば、板同士を突き合わせて溶接する際、位置が少しずれてしまう「目違い」や、溶接熱による反り・ねじれが起きやすくなります。そのため、あらかじめ治具を取り付けて部材の位置をそろえ、形を保ったまま溶接できるようにする役割があります。
なお、現場では治具の一種として「馬(うま)」と呼ばれる簡易治具が使われることもあります。馬は加工時の柱や梁を載せる台の役割を持ちます。
溶接の見た目に関する用語
ここでは、完成した溶接を見たときに気になる用語を、分かりやすく解説します。
ビード
ビードとは、溶接によって盛り上がった部分のことです。
溶接中に溶けた金属が冷えて固まった跡で、溶接の強度や仕上がりの美しさが目に見えて分かる部分でもあります。太さが均一でなめらかであるほど、安定した溶接ができていることの目安になります。
スパッタ
スパッタとは、溶接中に飛び散る小さな金属の粒のことです。飛び散った金属の粒子は冷却され、溶接部位やその周辺に付着します。
スパッタは見た目が汚くなるだけでなく、残したままにすると塗装や組立など次の工程に悪影響を及ぼします。そのため、グラインダーで削り取ったり、ハンマーやワイヤーブラシで落としたりする「後処理(仕上げ作業)」が必要になる場合があります。例えば、スパッタを除去せずに塗装すると、塗膜がうまく密着せず、剥がれやサビの原因になることもあります。あらかじめスパッタをきれいに取り除いておくことで、仕上げ作業がスムーズになり、全体の作業時間を短縮することにもつながります。
溶込み
溶込みとは、溶接した金属が母材の内部までどれだけ深く溶けているかを表す言葉です。
見た目がきれいでも、溶込みが不足しているとちょっとした衝撃で簡単に外れてしまうことがあります。そのため、鉄骨製造の現場では、特に重要視されるポイントのひとつです。
裏波(裏ビード)
裏波とは、溶接した部分の反対側(裏側)に少し盛り上がって見える溶接金属のことです。
金属が中までしっかり溶けてつながると、裏側にもこの盛り上がりが現れます。 裏波が綺麗に出ている場合は、表面だけでなく内部までしっかり接合できていることの目安になります。
焼け(焼け色)
焼けは、溶接部の高温により金属表面が酸化して生じる色相の変化(藍色、黄色、茶色、黒など)を指します。
溶接歪み
溶接歪みとは、溶接によって材料に加わる熱と冷却時の収縮により部品に生じる変形のことです。
製品の精度や見た目に大きく影響するため、実際の溶接現場では治具で固定して溶接歪みを抑えたり、仮付けをしてから溶接したり、変形した部分を叩いて修正しながら溶接したりと工夫が凝らされています。
溶接方法に関する用語
溶接にはいくつかの方法があり、使う機器や作業の進め方によって名前や特徴が異なります。この章では、現場やDIYでよく使われる代表的な溶接方法について、初心者目線で整理します。
半自動溶接(ガス有り/ノンガス)
半自動溶接とは、ワイヤを自動で送り出しながら溶接する方法です。
トーチを動かすことに集中できるため、作業が安定しやすく、DIYでも扱いやすいのが特徴です。鉄骨製造の現場でも主力として使われています。
半自動溶接には、「ガス有り溶接」と「ノンガス溶接」の2種類があります。
ガス有り溶接は、シールドガス(アルゴンガスや炭酸ガスなど)を使用して、溶接中の金属を空気から守りながら行う方式です。
ノンガス溶接は、ガスを使わず、専用のワイヤ(フラックス入りワイヤー)に含まれる成分で溶接部を保護する方式です。ガスボンベが不要なため準備が簡単で、屋外作業でも風の影響を受けにくいのが特徴です。DIYや家庭用として人気が高く、初めて溶接に挑戦する方にも扱いやすいタイプといえます。一方で、スパッタがやや多く、仕上がりはガス有り溶接に比べて粗くなりやすい傾向があります。
被覆アーク溶接(手溶接)
溶接棒を使ってアークを発生させ、その熱によって金属を融解・接合する溶接方法です。
機械構造がシンプルで、家庭用100V対応機も多く、初心者の練習用としてよく使われます。スパッタや煙が出やすいため、安全対策と換気が必須です。
TIG溶接
「TIG」とは、「タングステン・イナート・ガス」の略称です。片手に溶接棒、もう片手に溶接トーチと呼ばれる道具を持ち、アークを発生させることで、金属を溶接します。
TIG溶接は、鉄・アルミ・ステンレスなど、さまざまな金属に対応できる溶接方法です。特に、薄板や精度が求められる溶接に向いており、仕上がりがきれいなのが特徴です。
電源・機器まわりの用語
溶接機を使う上で欠かせないのが、電源や機器の性能に関する知識です。ここでは、家庭用・業務用の違いや、溶接機選びの判断材料になる用語を解説します。
100V/200V/三相電源
100Vは、日本の家庭用コンセントで使える電源で、DIYや家庭用の溶接機に最もよく使われています。
200Vは、より高出力が必要な場合に使われ、厚みのある材料を溶接したい場合などに向いています。
三相電源は工場などで使われる業務用電源で、鉄骨製造の現場では一般的ですが、家庭でのDIYでは基本的に使用されません。
使用率(デューティーサイクル)
一定時間内に、どれくらい連続して溶接できるかを示す数値です。
使用率が低いと、途中で休ませる必要があります。長時間作業をしたい場合は、使用率の高い機種を選ぶことが大切です。
安全・作業に関する用語
溶接は高温・強い光・火花を伴う作業のため、安全対策がとても重要です。この章では、ケガや事故を防ぐために知っておきたい、安全・保護に関する用語をまとめます。
溶接面
アーク光や火花から目、顔、首回りを守るための保護具です。
強い紫外線を直接見ると、目を傷める危険があります。遮光レンズを備え、必要な遮光度により視界を確保しながら危険から保護します。
遮光度
溶接面に使われている遮光ガラスには「遮光度」と呼ばれる保護レベルがあります。数字が大きくなるほど光を強く遮り、アーク光から目をしっかり守ることができます。
日本では、遮光保護の性能は日本工業規格 JIS_T 8141(しゃ光保護具)によって定められているため、溶接面を必要とする際は、自分に合う遮光度を選びましょう。
初心者の方は、自動遮光タイプの溶接面を選ぶと、遮光度を自動で調整してくれるため安心です。
防護具
防火手袋、防護服、安全靴など、身体を守るための装備の総称です。
溶接では必須の安全対策です。
ヒューム
溶接時に発生する金属の微粒子を含んだ煙のことです。
特定化学物質として認定されており、事業者は規定にも基づき濃度を測定し、適切に喚起を実施しなければなりません。DIYや家庭で溶接を行う場合でも、ヒュームを吸い込まないよう、屋外で作業する、換気扇を使用する、送風機で空気を流すなど、十分な換気対策を行うことが重要です。
用語が分かると溶接は一気に身近になる
このように、溶接用語を一つずつ理解していくことで、「溶接は難しそう」というイメージは徐々に変わってくるのではないでしょうか。また、溶接用語を理解すると、作業内容や注意点が明確になり、安全性と完成度が向上します。 初心者ほど、まずは用語を知ることが溶接上達への第一歩です。
「体感」で理解できる場所

溶接用語は、文章で意味を知るだけでも理解することはできますが、実際に見て・聞いて・触れてみることで、より理解を深めることができると思います。
静岡県沼津市にある溶接体験工房「アイアンプラネット ベースオブ沼津」では、初心者の方でも実際に溶接を体験することができます。
使用するのは、DIYでも人気の高い SUZUKID製の溶接機。
スタッフのサポートを受けながら、サイドテーブルや表札などの作品づくりに挑戦できるため、「この用語、こういう意味だったのか」と実際の体験を通じて理解を深めることができます。
運営しているのは、鉄骨建築請負事業を行う 株式会社影山鉄工所。
日々の製造現場で培った知識や安全意識をもとに、初めての方でも安心して溶接に触れられる環境が整えられています。
ご興味のある方は是非足を運んでみてください。