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2025.09.30 溶接topics

鉄骨とSDGsの関係は?リサイクルの流れや高炉・電炉の違いを解説

目次

近年、建設業界では「SDGs(持続可能な開発目標)」の取り組みがますます重要になっています。一見すると、鉄骨とSDGsはあまり関係がないように思えるかもしれません。

しかし、鉄は建物や橋などを支える欠かせない素材であり、特に地震が多い日本では耐震性に優れた鉄骨造の建物が数多く採用されています。 そして、強くて長持ちなだけでなく、リサイクル率が90%以上という驚くべき循環性を持ちます。この特性こそが、持続可能な社会の実現に大きく貢献しています。 本記事では、鉄骨の特徴や環境面での強み、リサイクルの流れ、さらに高炉材と電炉材の違いまで、分かりやすく解説します。

鉄骨の特徴

まずは、鉄骨の基本的な特徴をご紹介します。

高い強度と耐久性

鉄骨の大きな魅力は、優れた強度と耐久性にあります。日本は世界でも有数の地震国であり、台風も多く、突発的な揺れや強風に耐える建物は暮らしに欠かせません。鉄骨造の建築は強度・耐久性ともに高く、長期にわたって安全性を維持できます。そのため住宅やオフィスビル、商業施設など幅広い用途で「安心して長く使える建物」を実現します。

大空間を可能にする

鉄骨造は広々とした空間づくりに最適です。高強度の鋼材を用いることで、柱や梁の本数を減らしながら大きなスパンを一気に支えることができます。体育館やコンサートホール、巨大な物流倉庫など、天井の高い開放的な建物は鉄骨の得意分野です。設計自由度も高く、外観デザインの多様化や将来のレイアウト変更にも柔軟に対応できます。

リサイクル性の高さ

さらに注目したいのが、鉄骨が持つ圧倒的なリサイクル性です。建物の役目を終えた鉄骨は、解体時に取り外され、鉄スクラップとして回収されます。鉄スクラップとは工場で発生する切れ端や解体現場から出る廃材など、役目を終えた鉄の総称で、需要や景気によって価格が変動するほど経済的価値の高い資源です。何度でも資源として生まれ変わるこの特性は、環境負荷を抑えながら資源循環を実現する大きな強みといえるでしょう。 こうした特徴を踏まえ、使い終わった鉄骨がどのように再び資源へと姿を変えていくのか、リサイクルの具体的な流れを見ていきます。

鉄骨リサイクルの流れ

「建物を壊したら、鉄骨はゴミになるの?」と思う方もいるかもしれませんが、実際のところ鉄骨はリサイクルされ、新たな鉄や鉄骨として再利用されます。

建物の解体

解体時には部材ごとに取り外し、分別して回収します。鉄骨は「市中スクラップ(解体や製品から発生するもの)」と「自家発生スクラップ(製造工程で出る端材など)」の2種類に大別され、品質やサイズによって細かく等級付けされます。

スクラップの回収

分別されたスクラップは専門業者によって収集され、製鉄所へと運ばれます。

製鉄工程で再生

集められた鉄スクラップは電気炉で溶かされ、新たな鋼材へと再生します。高炉でも主に鉄鉱石を原料としますが、一部スクラップを混ぜて利用することがあります。

新しい鉄骨・製品へ

再生された鉄は製品化され、再び建設現場や工場で活躍します。 この循環サイクルこそが、鉄骨が「何度でもリサイクル可能な金属」として持続可能な社会を支える理由です。

高炉と電炉の違いは?

鉄を生産する方法には大きく分けて「高炉製鋼」と「電気炉製鋼」の2種類があります。どちらも同じ鉄をつくる工程ではありますが、原料やエネルギー源、環境への影響が異なります。ここではそれぞれの特徴と、近年注目される理由を詳しく見ていきましょう。

高炉製鋼

高炉製鋼は、鉄鉱石と石炭(コークス)を主な原料に、巨大な炉で約1500℃もの高温に熱してつくられます。高炉で作られた鉄は不純物が少なく、大量生産できることが大きな利点です。自動車や橋梁など、均一で高品質な鋼材が求められる分野では、長年この高炉材が主役でした。 しかし、石炭を燃やして熱を得る製法のため、二酸化炭素(CO₂)を多く排出してしまうという課題があります。近年は世界的にカーボンニュートラルが叫ばれるなか、高炉材の生産工程そのものが環境負荷の大きい製鉄法として見直しを迫られています。

電気炉製鋼

一方、電気炉製鋼は役目を終えた鉄骨や鉄製品を細かくした「鉄スクラップ」を原料に、電気エネルギーで溶かしてつくる鉄です。石炭を燃料として使わないためCO₂排出量が少なく、再生可能なエネルギーを活用すればさらに環境への負担を抑えられます。 電炉は高炉より規模が小さく、需要に合わせて柔軟に多品種生産できる点も特徴です。 しかし、高炉と比べて不純物が多く含まれることがデメリットです。鉄には強度やさびにくさを高めるため、ニッケルや銅などが含まれることがあります。これらがスクラップとして再利用されると、溶かしても少し残ってしまい、電炉でつくった鉄には高炉でつくった鉄より不純物が多くなります。

持続可能な未来へ

世界的に脱炭素社会への転換が進む中、日本でも電炉材への期待は高まり続けています。 高炉材には高品質・大量生産という強みがありますが、環境への負担を減らす観点では電炉材が主流になりつつあります。鉄骨が何度も再利用される時代において、スクラップを生かす電炉の存在はますます重要です。

鉄骨とSDGsの関連

鉄骨は、SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる複数のゴールに直結する素材です。 まず、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」において、鉄骨は都市インフラや産業施設を支える基盤として欠かせません。

さらに、目標11「住み続けられるまちづくりを」にも深く関わります。鉄骨造の建物は耐震性に優れ、地震や台風といった自然災害から人々の暮らしを守る安全な都市づくりに貢献します。

加えて、目標12「つくる責任 つかう責任」に示されるように、鉄骨は解体後も約90%以上がリサイクルされる循環型資源です。これは資源を大切に使う取り組みの一つといえます。

そして、目標13「気候変動に具体的な対策を」では、電炉材の活用によるCO₂排出削減が地球温暖化防止に直結します。

このように鉄骨は、「都市の安全性」「資源の循環」「環境負荷の軽減」を同時に実現し、持続可能な社会を支える重要な役割を果たしています。

企業としての取り組み事例

静岡県に拠点を置く影山鉄工所では、鉄骨と溶接を通じて持続可能な社会づくりに貢献しています。

製品ロスを出さない工夫

鉄骨は大型の鋼材を加工して製品をつくるため、どうしても切れ端や余りが出やすい素材です。他の企業でも行われているかと思われますが、影山鉄工所ではこのロスを最小限に抑えるために、必要な長さに近い寸法にて鋼材を発注する「ロール発注」をしています。ロール発注とは、市中の在庫品を購入するのではなく、鉄骨や鉄筋を製作する工場に発注することです。これにより余分な廃材を減らし、資源の有効活用とコスト削減を同時に実現しています。

影山鉄工所の溶接工が溶接している写真.png

スクラップを資源に変える仕組み

工場で発生する鉄スクラップは、種類ごとにきちんと分別して回収しています。分別されたスクラップはリサイクル業者に引き渡され、そこで資源として再び生まれ変わります。さらに、その売却によって得られた資金は、職人が日々使用する皮手袋などの備品購入に活用。単なる廃棄ではなく「再資源化」し「働く人を支える」仕組みをつくり出しています。

鉄骨リサイクルの流れ【影山鉄工所】.jpg

廃材を活かした溶接体験工房

地域とのつながりを大切にする取り組みとして、影山鉄工所では溶接体験工房を開いています。ここでは、工場で発生した廃材を溶接ワークショップの材料として再利用し、地域の方々に溶接を体験していただいています。廃材を有効活用しながら、ものづくりの楽しさや資源の大切さを伝える活動は、教育面・環境面の双方で持続可能な取り組みとなっています。

静岡県沼津市にある溶接体験工房.JPG

まとめ

鉄骨は建築を支える強固な素材であると同時に、持続可能な社会に直結する循環型の資源です。建物として使用した後も、解体によってスクラップとして回収され、再び新しい鉄へと生まれ変わります。そのリサイクル率は90%以上に達し、まさにSDGsの理念を体現する素材だといえるでしょう。 また、近年は鉄鉱石を原料とする高炉材に比べ、鉄スクラップを原料とする電炉材の活用が進んでいます。電炉材は二酸化炭素の排出量を大幅に抑えられるため、鉄骨建築は地球にやさしい建築方法として、これからますます期待が集まります。

影山鉄工所でも、製品ロスを抑えるためのロール発注、分別スクラップを備品購入に活かす取り組み、廃材を使った溶接体験工房の実施など、現場から持続可能な社会づくりを進めています。鉄骨や溶接に関わる日々の工夫は、資源循環を促し、地域と未来を支える力になります。

弊社では、鉄骨の設計・製作・施工まで幅広く対応しています。お見積りやご相談はお気軽にお申し付けください。

また、弊社では求人も募集しています。「これから鉄工所で働きたい!」「鉄工所の求人を探している!」という方は是非以下のリンクをチェックしてください。

ご応募お待ちしております。

採用情報はこちら↓

RECRUIT | 鉄人の創生物|影山鉄工所 (kageyama-co.jp)

参考サイト

鉄リサイクルの仕組み - 一般社団法人日本鉄リサイクル工業会

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